第6話 新歓罰ゲーム




翌日、僕はホールを訪れた。そして入団届けを記入した。もちろん希望楽器はチューバだ。僕の横ではさほちゃんが希望楽器フルートと記入して団長のあーちゃん先輩に提出していた。その手は震えていた。フルートに対する思いが込められていたのだろう。


「はい。それじゃあ、今から新歓レクリエーションを始めます。今から一時間なんでもバスケットを行います。この何でもバスケットはペアで座ってください。同じペアを連続するのは反則です」


二つの椅子がくっついていてたくさん並べられていた。


「座れなかった二人は罰ゲームでくじを引いてもらい自己紹介をした後にくじに書いてある質問に答えてくださいね。じゃあ、始めます。何でもバスケット!」


いきなりスタートした何でもバスケット、僕は反応が遅れ座れなかった。


「チューバ二人組反応遅すぎ」


綾先輩が立っている僕とゆめみん先輩に言う。


「えっと、りょうちゃんくじ引いていいよ」

「あ、はい。わかりました。じゃあ、失礼します」


僕はゆめみん先輩に言われた通りくじを引き、くじの中身を確認しながら軽く自己紹介をする。


「えっと、チューバ志望の桐谷亮太です。よろしくお願いします」

「チューバパート、佐藤夢海です」


僕とゆめみん先輩はとりあえず軽い自己紹介を済ませてくじに書かれている内容を読み上げる。


「えっと…『アスパラガス好きですか?』」


僕が質問を読み上げた瞬間笑いが起こる。誰だよこの質問書いたやつ。


「それゆめみんが書いたやつじゃん」


及川さんが笑いながら僕の疑問を晴らしてくれた。あんたかい!この質問書いたのあんたかい!何故にアスパラガス!?


「えっと、ちょっと苦手です」

「私も嫌いです」


嫌いなのにアスパラガスさんを題材にしたんかい!本当にかわいいな…


「なんでアスパラガス題材にしたんですか?」


興味本意でゆめみん先輩に小声で質問してみるとゆめみん先輩は少し笑いながら気分?と首を傾げていた。かわいいです。


その後も何故かゆめみん先輩が書いた質問ばかりが引かれるという謎の現象が起き何でもバスケットの罰ゲームは完全にゆめみんワールドが展開されていた。



「さて、じゃあそろそろ駅にバスが来るからみんな駅に移動してください」


あーちゃん先輩の指示を聞きみんなは椅子の片付けを始めて駅に移動する。


駅に移動するまでの間、僕はゆめみん先輩とどうでもいい話をしていた。ゆめみん先輩からかなりマニアックなアニメを勧められた時はかなりびっくりしたなぁ…


「え、りょうちゃん運動できないんだ…意外だね…」


バスに乗ってからは高校の時の話をしていた。その際、僕が運動が苦手だということを話すとゆめみん先輩は結構驚いていてなんか面白かった。


「力もないからチューバを持つのもきつくて…」

「それって私より力ないんじゃ…」

「多分そうだと思います…」

「えっ…じゃあ、ちょっと試してみていい?」

「えっ、試すって…」

「指相撲、やりたくない?」

「え、やりたいです」


隣に座るゆめみん先輩が手を差し出して来たのでその手を優しく握る。すごく小さくて柔らかく暖かい手だった。ゆめみん先輩の手に触れて、すごくドキドキする。


ちなみに、指相撲ではゆめみん先輩に全敗し、かなり恥ずかしい思いをした。いや、これは決して僕の力がないんじゃなくて…ゆめみん先輩と手を繋げてドキドキして緊張して力が出せなかっただけ。と必死に心の中でいい訳した。


「えっと、チューバ吹いてる時キツイなら私が使ってるハンバーグ使う?」

「ハンバーグ?」

「あ、えっと私が使っているチューバスタンドの名前ね。次の練習の時、貸してあげるから試してみてよ」

「わかりました」


後から聞いた話なのだがゆめみん先輩が使っているチューバはチーズという名前らしい。ハンバーグよりチーズの方が大きいじゃないですか…チーズオンハンバーグって感じだなぁ。



その後、新歓の会場に到着し新歓コンパが始まった。焼き鳥や唐揚げ、どて煮など運ばれてくる料理の数々を見て今までの高校の友達と夕食を食べていた時とは全く違い大人の飲み会というような感じがした。新歓ではたくさんの人たちと言葉を交え、写真を撮ったりして楽しんだ。人と話すことが苦手だった僕は最初はあまり馴染めていなかったが周りの先輩たちがうまいこと話を振ってくれたので僕もだんだん馴染むことが出来た。






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