第15話 無人の公園



 きのうと同じベンチにすわって、前田は寂しげな公園の虚空をぼうぜんと眺めた。

 スズメが数羽、公園のまんなかで砂利をつついている。遠くで、ほうほうとハトの鳴く声がした。すぐとなりの道路を、一台の大きなトラックが走り去る。

 老人は、現れない。


 きっと老人は、なんらかの狙いで、牧野を消したのだ。自分と牧野の関係を知っていたのは、前々からターゲットを観察していたからだろう。そして、人を消すことに慣れている老人は、偶然泣いている俺をみつけて、からかったのだ。

 俺はどうなる?もし俺があれらをうっかり声に出してしまっていたのなら、俺は共犯者として捕まるかもしれない。もし捕まらなくても、俺があの老人のことを警察に話したりしたら、今度は自分が消されかねない。


 前田の頬を、一滴の冷や汗がすうっと流れ落ちた。

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