第3話 姉妹の反応はそれぞれ
アランがアタシの監視役について2日目。昨日、明後日に会議があるといっていたからこいつの親ミーシャがくるのははやくて明日の夜……。でも魔人族は時間にルーズな者が多いから会議の始まる時間は遅いと聞いたことがある。なら明後日来ると考えた方がよさそうね。
あれからアランはアタシの言いつけをよく聞くようになり、声も普通に張ってくれるようになった。できるなら初めからやれとイラついたがそこはもういい。
「ラファ様、第一回目の試練が決まったようです」
「試練ねぇ…まぁいいわ、内容は?」
「筆記試験を受けていただくようです」
「はぁ?」
姉様との対決(嫌々だが)の第一回目は筆記試験だと告げられ、眉を顰める。今さらなぜ…アタシより姉様の方が優秀なのはみんな知っていることなのに…。
「内容は?」
「秘密だそうで…えっと…実力テストのようなものだと…」
「実力テスト…」
めんどくさ〜〜。
てかこれあれよね?別に手を抜いてもいいやつじゃない?あー、でもそれは姉様に失礼かしら…手を抜かなくてもどうせ勝てないし、普通にやるべきだ。あーめんどくさい。なんでわざわざ試験なんか受けなきゃいけないのよ。だるすぎ。
アタシはベッドに横たわり寝ることに決めた。
「試験の日にちは?」
「あ…明日の夕方だそうです…」
「そ、分かった」
「……」
布団をかぶり目を閉じる。朝食を食べてお腹が満たされてるからいい感じに眠気がきている。この城の薄暗さもちょうどよく…。
「べ、勉強しないんですか?!」
「…はぁ?」
「試験があるのに…勉強しないのかと…」
「なんでしなきゃいけないのよ」
何言ってんのこいつ。眠りを邪魔してまで言うこと?
わざわざ目を開けアランを見ると、困惑した表情で佇んでいた。なんなの。
「実力テストなんでしょう?」
「は、はい…」
「なら実力を出せばいいだけじゃない。わざわざ勉強する必要ないでしょ。それじゃ寝るから邪魔しないで」
いくつかある枕をひとつ掴みアランに向かって投げつける。すぐに目を閉じたため当たったかは確認しなかったが、ボフッという間抜けな音とゔっという声で直撃したことは分かった。
はぁ…やっと寝れる。
▼
「じ、実力テスト…?」
「はい」
「し、しかも明日の夕方…」
そ、そんなぁ…。私テストで勝てる気しないわぁ…。私は昔からラファちゃんには頭脳で勝てない。彼女はスポンジのような子で、与えられたものをすぐに吸収し自分の
「はぁ…」
「…ルシラ様、失礼ですが一つお聞きしても?」
「いいわよ、なにかしら?」
「お勉強、苦手なのですか?」
「直球ね…」
ふぅ…と息を吐いてからそうよと答える。するとカイルは訝しげに私を見た。
「頭脳明晰だとお聞きしておりましたが…」
「そんなことないわよ、ラファちゃんのがよっぽど優秀で頭もいいわぁ」
「そう、ですか」
彼女は最善策を瞬時に思いつける。それに比べて私は目の前のことに必死で最善策なんて選べないし、全てを救おうとしてしまう。そして結果的に全てを失うタイプだ。
…やはり、魔王に相応しいのはラファちゃんだ。彼女ならこのアンガノフを導いていけるし、その方が民も安全だろう。世論がどちらに傾いているかは分からないが家庭教師たちがラファちゃんの方が相応しいという風に話しているのを聞いたことがある。
でも、私は魔王を簡単に諦められない。私は必ずお父様に認めてもらう。私はラファちゃんの上に立っていなければならないのだ。
「そうよ、だからメソメソしてる暇ないわよね…」
「? あの、ルシラ様…?ブツブツと何を…」
「今から勉強するわぁ!あなたは気配を消すかどこかに行ってちょうだい!」
すぐに勉強部屋という名の個人の書斎に入り必要な本を選ぶ。選んだものから魔法で全て机の上に重ねていく。基礎、歴史、政治、経営に心理学…自分が勉強した範囲のものをどんどんと選んでいく。今日中に全てを復習するのは無理かもしれないけれどやるしかないのだ。
「近くにいるなら気配を消してちょうだい!集中したいの!」
「も、申し訳ございません……その、部屋の前にいますのでいつでも声をかけてください」
「分かったわ」
思わず怒鳴ってしまったけれど、今は本当に集中したかった。私は魔王の素質があると、優秀だと認められなければならないのだから。ラファちゃんよりも上等の能力があると思われなければならないのだ。
全て選び終えたところで積み重なり塔のようになっている本の1番上を机の上に持ってきて早速開く。完璧に覚えているところは復習しなくていいとして…苦手なところをやらなくちゃ。目次を見て目星をつけてから、この本を読みながら勉強した時のノートも魔法で引き寄せる。
あぁ、そうだアラームもつけておきましょう。それにラファちゃんは今日は何をするのかしら。訪れたとして、私は必死に勉強してるところを見せてはならない。華麗にちょっと見直しているだけよと言わなければならない。カイルにそれだけ伝えなきゃ…。
時間がないのにと眉間を抑えながら扉を開けると、少ししてカイルが入ってくる。
「ラファちゃんが私を訪ねてくるようなら声をかけてちょうだい、それだけよ。すぐ出て扉を閉めて。お願いね」
「は、い…」
私の勢いに押されているカイルは戸惑った様子ながらも頷いてすぐに出て行った。
まだ今は午前、時間はまだまだあるわ。なんとかしてみせる。私はギュッとペンを握り、本の文字を目を走らせた。
明日の試験のために、全力を出す!
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