第43話 新幹線とかあればな……

 まだ納得のいかない顔を浮かべるマリィをよそに話を進めていく。


 「一悶着あったけど二人が快く受け入れてくれて良かったわ」


 「ええ、せっかくここまで来てくれたソウタさんに嫌な思いをさせるところでしたね」

 

 リネットとサーシャが嬉しそうにそう言うと、フィオも笑顔で俺を迎えてくれる。

 

 「良かったねソウタ君。みんなももう喧嘩しちゃダメだよ」


 「ありがとうフィオ。ところでサーシャ。これからどこに向かうとか決まっているのか?」


 「一応ジュラールの手掛かりを掴むために次はムングスルドに行く予定です。ギフトを盗まれた国ですし、ジュラールを探しているでしょうからね」 


 「そうか。聞いた話だと次はグラヴェールに現れる可能性があるらしい」


 俺はガレインさんから教えてもらった話を要点をかいつまんでサーシャ達に話す。


 その話を聞いたリネットが頭に指を押し当て話をまとめる。

 

 「つまりジュラールはその女性を探していて、報復のためにムングスルドのギフトを盗んだってことかしらね。そして、ムングスルドとグラヴェールが裏で何かやってると……。うーん」


 「そんなところだろうな。もしかしたらこの世界に被害をもたらすのは、ジュラールじゃなくて他の国の可能性もあるんじゃないのか?」


 「それはありえるわ。その辺はノーマ達が調べてくれるはずだったんだけど、失踪してるから現状自分達で調べて判断するしかないのよ」


 「可能性を一つ一つ潰していくしかないってことか……。ことが起こる前に原因を特定出来ればいいんだろうけど、それは難しいだろうしな」

 

 「でもソウタさんお手柄ですわ。今までは全て後手に回ってましたが、今回うまくいけば先手を取れそうです」


 「本当に貴重な情報だわ。ソウタが教えてくらなかったら、手当たり次第探していただろうからね」


 「今グラヴェールに進行してるのがジュラールと関係があるのか分からないけど、行ってみる価値はあると思う」


 「そうと決まればすぐにでも向かいましょう。ちょっとマリィまだ怒ってるの? 悪かったわよ。謝るから機嫌を直してちょうだいな」


 マリィはベンチに座ったまま、俺の話を聞いて考え事をしてるようだ。


 「いや、そうではなくてやはり色々とおかしいと思ってな。初めて異世界に介入するとはいえノーマ達だけでこの世界に起こる破壊の原因を調べさせたり、それを阻止するのに私達四人しか派遣しなかったりと、割と無茶な話しだと思わないか? そいつの話が本当ならただの泥棒退治で終わらないだろう」


 「それは私も思うけど転移出来る人数は限られてるし、今は本部と連絡が取れないけどこっちの事情を話せば増員してくれるはずよ」


 「万全の準備をしてるはずなのにそんなことあり得るか? それにジャンの予測もあやふやだし、襲撃してくるやつらの件もある」


 「初めて試みだから想定外の事態はあるでしょ。ジャンの予測がどうだったのかは上からの通達以外では知り得ないし、前にも言ったけど襲撃に関しては私達姉妹を狙ってるかもしれないわ」


 「二人を狙ってるならイストウィアから来てるはずだ。その辺は次ではっきりさせないとな」


 マリィがサーシャの方を見ながらにそう言うと、サーシャが申し訳なさそうな顔をする。


 「もしそうなら、あなた達を巻き込んでしまってることになるから謝らないといけませんね……」


 「あっ、いや、すまない。そういうつもりで言ったわけじゃないからそんな必要はない。ただ、今回の任務が正常なものとは思えないから、どうにかして信用の出来る人間に連絡をしないとと思ってな」


 自分の発言に少し落ち込んだ様子のサーシャを見て罪悪感を覚えたのか、話を変えて買い物に行く提案をする。


 「そういえばこの町の土産物が欲しいと言ってたな。今からグラヴェールに戻るなら買っていったらどうだ? 途中トレインの家に寄って荷物を置けるから問題ないだろう」


 マリィはサーシャの手を掴み広場にある露店に誘う。


 「でも、早くグラヴェールに戻らないと間に合わなくなってしまうかもしれませんから、無理に買わなくてもいいのよ」


 「トレインのところに寄っていったところで大して変わらないだろ。実は私も欲しいものがあったんだけど我慢していたんだ。リネット達もいいだろ?」


 リネットとフィオは喜んでそれに賛成し、早速露店に行きお土産を物色する。


 マリィは三人が楽しそうに買い物をしているのを少し離れたところから眺めている。


 「冷たい人間かと思ったらあんたも良いところあるじゃないか。さっきは俺もむきになって譲らなかったけど、俺が同行するのが気に入らないなら考えるよ」


 「お前に褒められても嬉しくはない。サーシャ達も長旅で疲れてるだろうから、気晴らしは必要だと思っただけだ。不本意であるが情報を提供してくれたのだから同行は認めよう」


 マリィはそう言って相変わらず冷たくあしらい、サーシャに音が鳴る可愛い動物の置物を購入するようお願いする。


 こりゃあ時間が掛かりそうだな。こうツンケンされたら取り付く島もないや。


 一応同行は認めてくれたようだし、それだけでも良しとするしかないか。

 

 買い物を済ませたリネットが俺のもとにやってきて、またもや何の生き物か分からない置物をくれる。


 「俺のも買ってくれたのか?」


 「まあね。待ってもらったし、マリィのことで嫌な思いもしただろうから、それのお詫びよ」 

  

 「俺はいいけど、マリィとリネット達との仲に亀裂でも入ったら悪いなと思ってさ。無理そうな別行動しようか?」


 「大丈夫よ。ああ見えて彼女悪い子じゃないからすぐ打ち解けるわよ。基本的にはあんな感じだけどね。それに、あなたを勇者にする約束もあるし」


 「まあ、頑張ってみるよ。そうだ! 勇者と言えばグラヴェールの勇者達ってどうなったんだ? サルブレムの勇者達は帰ってきてなかったみたいだけど」


 「あの後どうなるか動向を探ったんだけど、なんの動きもなかったわ。ただ、戦闘準備は進めてるみたいで、町にも武装した兵士がうろついてたりしてたわ」


 「もしグラヴェールが襲われたらどうするんだろうか。他の国はまだ様子を見てるみたいだし……。それで出発はいつにするんだ?」


 「今からでも馬車があればグラヴェールに向かいましょう。ここからだと結構距離もあるから早い方がいいでしょ」


 お土産を抱えたサーシャとフィオが笑顔で戻ってきて、四人の泊まってた宿屋に荷物取りに行く。


 その後馬車を手配をすることが無事出来たので、その日のうちに出発することになった。


 

 

 

 

 


 

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る