第2話 青春

 6月1日

 雨が降り出し、ジメジメしている。智也は除湿機をかけた。

 午前8時30分ごろ、近くにある干物販売店で、同店社長の長井由里子ながいゆりこと男性従業員の木南慎吾きなみしんごが遺体で発見された。 

 朝、出勤してきた女性従業員の木村香菜きむらかなが、店内に設置されたプレハブ型業務用冷蔵庫の中で、血を流して倒れている被害者を発見した事で発覚。冷蔵庫の外側には扉が開かないようにテーブルが置かれていた。2人の死因は刃物のようなもので首を刺されたことによる出血性ショックであると判明。警察は、同店での当日までの売り上げ金と釣り銭の保管状況から、現金約32万円が奪われたと判断し、強盗殺人事件として対策本部を立ち上げて捜査を開始した。

 香菜と智也は、顔見知りだった。智也はあの店の常連で、香菜はまだ20代なので、娘みたいに思っていた。

「気立てがいい娘さんだね?」と褒めると、「若いのにオジサンみたいな言い方ですね」と笑われたことがあった。


 6月4日

  📰トヨタ自動車が「ブレビス」を発売(同日、「アルテッツァジータ」を発売)。


 智也はオランダにやって来た。会社の研修旅行だ。東山や横浜のほか、マドンナ的存在の権藤梢ごんどうこずえもいた。

 オランダはライン川下流の低湿地帯に位置し、国土の多くをポルダーと呼ばれる干拓地が占める。国土の1/4は海面下に位置する。ヨーロッパにおける最高地点はドイツのアーヘンに近い南端のファールスにあるファールス山における322.5メートル。ドイツ、ベルギーとの三国国境点に近い公園内に最高地点を示す小さな塔が築かれている。2010年10月10日の憲法改正によってサバ島がオランダの特別自治体となったため、オランダ全域における最高地点はサバ島に存在するシーナリー山(877メートル)である。最低地点はロッテルダム北東のマイナス6.7メートルである。

 オランダの国土は、海側から海岸沿いの砂丘部、ポルダー、東部の高地である。砂丘部は北海の高潮から国土を守る大切な働きをしている。干拓を行うと地面が低下していく。この現象は今も起きている。過去数世紀にわたり、一世紀当たり15〜20センチメートルも低下していると考えられている。そして現在は海面水位が上昇するという温暖化の影響を受けている。

「長瀬君、『明日があるさ』見てる?」

 梢が尋ねてきた。変装してるから若いの仕方がないが、敬語使えよな?と、智也は思った。

「浜ちゃんとか出てくるよね?」

「うん、浜ちゃんが主演」

 当初、日本コカ・コーラの主力商品の一つ「ジョージア」のCM内ドラマとして登場した。その後、シリーズ化されたCMのタイアップ企画として日本テレビ系列でテレビドラマ化された。その際、設定や大半の出演者はCMから引き継がれている。

 出演者は主に吉本興業所属のタレントが起用された。総合商社を舞台に不況と闘うサラリーマンとその家族を主軸に描いた作品である。

 智也は1963年12月1日に発売された坂本九の『明日があるさ』もよく聴いていた。

 作詞は青島幸男、作曲・編曲は中村八大。自分に自信が持てず、意中の女性に恋心を打ち明けられないにもかかわらず、前向きに日々を過ごす男子学生の思いをコミカルに表現している。当時80万枚以上のセールスを記録した。

 あの曲が流行った17歳の頃を智也は思い出した。


 4月7日  

 📰NHK総合テレビで大河ドラマが放送開始。第1作は舟橋聖一原作の『花の生涯』。


 最初の主人公は井伊直弼で、演じたのは尾上松緑おのえしょうろくだ。智也は甘粕家の長男として神奈川県夕凪町に生まれた。今は道路も舗装され、オシャレになったがあの頃は砂利道でよく空き地で草野球して遊んだりした。

 智也には1年からの友達で思いを寄せている里帆りほって好きな子がいた。


 4月16日  

 📰京阪本線天満橋~淀屋橋間延伸開業。

 

 里帆にラブレターを送ったが、無視された。もしかしたら好きな子がいるのかも知れない。

 

 4月22日

 📰 女性週刊誌「女性セブン」(小学館)創刊。気になって本屋で読んだら、友人の焙烙大輔ほうろくだいすけに見つかって笑われた。

「男のクセにそんなもん」

「結構ナマナマしいな」

 大輔と一緒に土手に上がった。桜並木が美しい。風に花びらが舞っている。🌸


 4月25日

 📰大阪駅前に日本初の横断歩道橋設置。

 

 家族のみんなが寝静まった夜更け、智也は布団の中でオナニーをした。頭の中に里帆を思い浮かべた。彼女の胸を見たことはないが、妄想の中では巨乳で、張りやツヤ、弾力性すべてパーフェクト。エビゾリで絶頂に耽るシーンを想像して、ブリーフの中に射精した。


 4月27日

 📰サントリーが「サントリービール」を発売。

 

 学校帰り、土手でハーモニカを吹いていると里帆が後ろからやって来た。曲は童謡の赤トンボだ。季節的におかしいとは思ったが……。

「あれ、甘粕」

杉並すぎなみじゃん」

 杉並は吹奏楽部だ。🎺対する智也はラグビー部。🏈

「部活サボって何やってんの?」

「いろいろと事情があるんだよ」

「どんな事情があれ、サボるのはよくないよ」

 里帆は、13歳のときに母親が浴室でカミソリで手首を切って自殺し、かつて母親を捨てたも同然に扱った医師の父、天馬てんまに引き取られた。横浜の歓楽街で初めて会った父親は、現地の売春婦に溺れる生活破綻者だった。


 5月1日

 📰埼玉県狭山市で16歳の少女が失踪、その後自宅で脅迫状らしきものが見つかり誘拐として捜査開始。

 

 夕凪高校では、巨額の裏金で入学させた不祥事が明るみに出て、対象となる学生を次々と退学させ、芦田柚乃あしだゆずのもその1人であった。

 学園は不正入学者を退学・除籍にすることで世間の批判をかわそうとし、一方で裏金は高校に蓄財されたままのため、痛くも痒くもない状態であった。柚乃と吹奏楽仲間はそのやり方に立腹し、億単位の入学金を強奪しようと気勢を上げていた。

 一方、生徒会長だった袴田匠海はかまだたくみは、高校の現金輸送ルートを知っていたことから、柚乃と除籍された後輩の浜岡福はまおかふくと共に、入学金強奪の計画を立てていた。

 浜岡は男子バレー部で凛々しい体をしていた。柚乃は浜岡に惚れた。不正な金の存在を嗅ぎつけた凶悪な犯罪組織が、横取りしようと夕凪町の西にある廃墟に襲いかかり、袴田や浜岡は鉄パイプで応戦するも、奴らの獲物はナイフだった。

 🌇カァカァカァ……黄昏にカラスの鳴き声が木霊する。廃墟には袴田と浜岡の死体が転がり、血なまぐさい匂いが漂っていた。袴田たちと一緒にいた柚乃の姿はなかった。 


 5月8日

 📰 南ベトナムのフエで仏旗掲揚禁止抗議デモに警察が発砲、8名の犠牲者を出し、仏教徒への弾圧はじまる(仏教徒危機)。

 ホームルームが終わり、担任の禿頭が教室から出て行く。偶然にも、明智あけちという名字だったので陰で『キンカン頭』と呼ばれていた。

 里帆が智也の近くにやって来た。胸がキュンキュンした。❤

「どうしたんだ?」

 里帆は、つい最近この町で起きた凄惨な事件について話し始めた。

「犯人はまだ捕まってないんだろう?」

「ええ。しかも、友達の柚乃が行方不明になっているの」

「そりゃあ大変だ」

「助けてくれたらつきあってあげてもいいわ」

 どことなく投げやりな態度だが、まぁいいか。智也の下半身はあまりの熱さに燃えそうだった。

 だが、袴田たちはナイフで殺されてる。痛いんだろうなぁ?

 里帆のアソコってどうなるんだろう?入れたとき、どんな感触がするのかな?けど、そんなに簡単に犯人が見つかりっこない。

 智也は血眼になって犯人を探した。


 5月9日

 ゴールデンウィークも過ぎた夕凪湖。リゾートホテルの週末の売上金を、横浜の銀行へ運ぶ現金輸送車が、夕凪町の郊外で襲われた。仕事に成功した犯人たちだが仲間割れに。鼻を潰された強盗のプロ・県克也《あがたかつや》、スリ師の佐山達也さやまたつやとその恋人の中川晴美なかがわはるみ、ヤクザ組織に雇われたシャブ中の牧田泰史まきたやすしが絡んで悪党同士が殺し合うが、警察の圧倒的な機動力により包囲される。

 中華街は血みどろだった。

 午後7時になったときだった、爆風に捜査員たちは吹き飛ばされた。手榴弾を手にした黒服の男がニヤリと笑った。

「どうして、俺たちクズを助けた?」と、県は黒服に尋ねた。

「オマエたちの為じゃない」

 黒服の正体は智也だ。1人殺すと1日、2人殺すと2日不死身になれる。5人殺したから5日間不死身だ。

 5月14日まで怖いものなしだ。


 5月10日

 智也は夕凪高校の校長、蘭丸山葵らんまるわさびから明智の殺害を依頼される。任務を成功させたら自分が行きたい大学に推薦してくれるそうだ。明智は蘭丸の悪事を警察に話そうとしていた。依頼通りに午後7時、夕凪駅前で明智の腹をナイフで刺して殺害した智也だったが、会合場所のスナックに蘭丸の姿は無く、警察のパトカーが迫っていた。

 15日まで俺は鉄腕アトムより強いんだ。

 21世紀の未来を舞台に、原子力(後に核融合)をエネルギー源として動き、人と同等の感情を持った少年ロボット、アトムが活躍する物語。米題は『ASTRO BOY(アストロ・ボーイ)』。

 本作は、1951年(昭和26年)4月から翌年3月に連載された『アトム大使』の登場人物であったアトムを主人公として、1952年(昭和27年)4月から1968年(昭和43年)にかけて、「少年」(光文社)に連載され、1963年(昭和38年)から1966年(昭和41年)にかけてフジテレビ系で日本初の30分テレビアニメシリーズとしてアニメ化された。このアニメ第1作は平均視聴率27.4%を記録しその後、世界各地でも放映された。

 智也は走るのをやめた。警官たちは銃を撃ってきたが何の痛みも感じなかった。

 智也は憤り、蘭丸に報復する事を決意する。


 5月13日

 ダンサーの和泉いずみは、『マーメイド』なるプロダクションの広告に応募し東京に向かおうとしていた。夕凪駅で恋人の喜助きすけに電話をしていた和泉は、智也に拳銃を突き付けられ、人質として智也と共に東京へ行く列車に乗せられる。東京行きの列車が発車しようとした時、和泉はチューリップハットをホームに放り投げる。しかし、駅員は不審に思う事も無く、単なる忘れ物として処置してしまった。車中でトイレに行くフリをして、和泉は千円札に殺人犯の人質になっている事を記した。


 通話中に会話が途切れて不審に思った喜助は、和泉の言っていた『マーメイド』を調べる。しかし、渋谷に本社があるという『マーメイド』は事務所をすでに引き払っていた。東京駅に向かい、赤いハイヒールの片方が忘れ物となっている事を知り、呼び出しをするが成果は無かった。喜助は、『マーメイド』が、近頃噂されている学園犯罪組織の隠れ蓑ではないかと考えた。新聞社デスク、篠田珍助しのだちんすけの許可を得た喜助は、和泉の追跡を開始する。


 渋谷に着いた智也と和泉は、チューリップハットの代わりの帽子を買う為、帽子屋に入る。👒麦わら帽子を購入した和泉は、店員に千円札を渡すが、店員はメッセージに気づかない。その千円札は、2人と入れ違いになって入ってきた西田博之にしだひろゆきにお釣りとして渡された。

 スーパーマーケットの社長の、息子である博之は夕凪高校の2年生だった。

 博之は、数ヶ月前から蘭丸に目を付けられていた。帰宅する博之を、県と佐山が車で拉致した。博之は和泉の千円札を車窓から放り投げてしまう。


 5月14日

 智也と和泉が辿り着いたのは、『黄金町』と呼ばれる猥雑な歓楽街だった。雑多な人種がひしめいている中、芦田柚乃は、チンピラを用心棒にして『黄金町』の顔役となっていた。智也は、『黄金町』の一角にある売春宿に等しいホテルにチェックインし、和泉を軟禁状態にする。

 タオルで手足を縛られ、ガムテープを口に貼られた。

 智也は和泉に、中学時代の凄惨なイジメを語り、全てが信用できないと漏らす。最初は野球をやったり、鬼ごっこをしていた三島樹みしまいつきという奴が、中学3年のときに豹変して技術の授業のときに、使うハンダゴテを腕に押し当てて、「この痛みに耐えられるか?やめてほしかったら、金よこせ」と脅してきた。三島は校長の息子なので、教師たちは見て見ぬ振りをすることに決めた。

 一方、和泉に目を付けたホテルのボーイ、龍ヶ崎一平りゅうがさきいっぺいは、彼女を蘭丸に引き渡そうと策略する。貧乏な彼は金に目がくらみ、蘭丸に協力した。「ボーナス10万か、これで家賃が払えるぞ」

 智也は里帆とやりたくて仕方がなかった。柚乃を説き伏せる必要があった。きっと、柚乃は蘭丸にうまく言いくるめられているのだ。それか、浜岡の仇を討つために味方のふりをしているのかも知れない。 

 さすがの蘭丸も柚乃が誰とつきあっていたか、までは知らないだろう。

 蘭丸に命じられた龍ヶ崎が、柚乃の口を塞ぐ可能性も捨て切れなかった。

 智也は踊り場から拳銃で龍ヶ崎を狙い撃った。サイレンサーを装着してるから、音を聞かれる心配はない。龍ヶ崎は胸を手で押さえ絶命した。16日まで不死身モードだ。 

 社長室は2階にあった。

「そこに隠れてんだろう!?」

 扉の前で智也は叫んだ。

「こんなことして何になるんだ!?」

「………」

「杉並里帆、知ってるよな?」

「里帆がなんだっての?」

「君を心配していた。だからもうこんなことはやめるんだ」

「あなた、警察?」

「いや、自分は夕凪学園の甘粕だ」

 ドアが開いて、柚乃が出て来た。タイトなスカートを穿いていた。

「私にやり直せるからな?」

「全ては自分次第さ」


 翌朝、柚乃は里帆の前に姿を現した。教室で太宰治の『斜陽』を読んでいた里帆は目を丸くした。 

「嘘でしょ?」  

 智也は腰に手を当てて、ワッハッハッ!と豪傑笑いした。

「警察に行って罪を償う」

「約束どおり、僕とつきあってよ」

「うん」 

 この日は智也の17歳の誕生日だった。

 

 5月22日  

 📰ギリシャの民主左翼同盟党首グリゴリス・ランブラキスがテッサロニキで行われた反戦集会での帰り道、サイドカーに乗った男に棍棒で頭部を殴打され負傷、5日後の5月27日に脳挫傷で死亡。

 

 5月も残り3日だ。ラグビー部の智也は、試合中に前歯を折る怪我を負って病院に連れて行かれる。治療のための麻酔で意識が朦朧とする中、智也は最近の自分の生活を振り返る。


 智也は近所の民宿の女主人で未亡人の結子ゆうこと出会い、彼女に強く惹かれる。彼女は深く愛していた夫を自殺で亡くしており、貧しくつましい生活の中、心を閉ざして2人の子供の世話に明け暮れていた。そんな彼女を幸せにしたい一心で、智也は持ち前の立派な体格と腕っ節の強さを活かしてラグビー選手となる夢を抱く。

 甘えを捨てた智也だったが、自分を頑なに拒み続ける結子への想いは募るばかり。しかし、一方の結子も実は智也を憎からず想っていたことから、23日の夜、泥酔した結子は公園でバッタリ会った智也とペッティングをした。ところが、それでも結子は智也に対して心を開こうとしない。


 歯の治療が終わった智也はチームによる退院パーティに出席した後、結子の子供たちへのプレゼントを持って帰宅する。智也と結子は穏やかな一夜を過ごす。

 智也は金庫破りをして大金を手に入れた智也は、結子に高価なコートを買い与え、高級レストランに連れて行く。しかし、智也の思い上がった傲慢な態度に嫌気がさした結子はそそくさとレストランを出て行く。2人の関係がぎくしゃくする中、結子は智也に自分が近所から『夫を自殺に見せかけて殺した鬼畜』呼ばわりされてること、そんな世間の目が怖いことを告白する。これをきっかけに2人の関係は修復不能な状態となり、智也は家を飛び出す。

 6月6日の夜、結子が脳出血で病院に入院した。智也は病院に駆けつけるが、結子は智也が見守る中、呆気なく亡くなる。


 智也は長い回想を止めた。ライン下り終え、ホテルにやって来た。夕食を食べ終えると、梢が怪談話をはじめた。    

 フライング・ダッチマンという幽霊船が現れるそうだ。

 ファン・ストラーテントという船長が悪天候の中を喜望岬を回って航海すると神に豪語したが、神の怒りを買って船は沈没した。 

眠気を覚えたので螺旋階段を上り、部屋に入ったた。🇳🇱オランダの旗を手に入れた!


 6月10日・朝霞市

 智也は、長井と木南を殺した犯人を突き止めた。

 かつて、長井の下で働いていた安藤勇あんどういさむという男だ。午前中、朝霞駅近くにあるアパートに赴くが管理人は安藤が前日、自動車事故で死亡したと彼に告げる。安藤の葬儀に出席する智也は、そこで朝霞警察署の焙烙大輔と鉢合わせた。

 葬儀所の外は灰色の空、今にも雨が降り出しそうだ。

 妙なところで再会するな?と、智也は思った。

 整形して顔を変えているので、大輔は智也に気づかなかった。

 大輔は安藤が街で最悪の密売人だと告げるが、高2の2学期の通信簿がオール2だったのを思い出し、智也は不安を覚えた。


 6月11日

 事件の関係者を調査すると、安藤の恋人であった鵜飼柚乃うかいゆずのと志木駅前の喫茶店で出会う。50代になった柚乃はほうれい線が目立っていた。彼女は朝霞駅前にあるクラブ『レインボー』で働いていた。

 智也と彼女は2人で事件の目撃者である宿の管理人、倉木鈴子くらきすずこに話を聞き、現場に未知の“第三の男”がいたことをつきとめる。しかし貴重な証言を残した鈴子は、その日の夜に何者かに斧で殺害され、智也がその下手人だと疑われて逃走。


 6月12日

 さらに、安藤の知人である沖田和也おきたかずやからも追われ、朝霞署にいる大輔に助けを求める。そこで、初めて大輔から安藤が、粗悪栄養ドリンクの売り捌きで多数の人々を害した実態の詳細やその証拠の数々を見せられる。

 友情・愛情と正義感の間で行き詰まった智也は酒で気を紛らわせる中、朝霞から出て行くことを決意。酩酊状態のまま、別れを告げるために寄った柚乃の下宿の近くで、第三の男と邂逅する。土砂降りだったのでレインコートを着ていたが、彼は安藤にほかならなかった。まるで幻かのごとく安藤は消え去ってしまう。

 智也は、安藤を目撃したことを大輔に報告。

 大輔は疑っていたが、念のために安藤の墓を掘り返し、骨を鑑定すると別人の遺体だったことが判明し、安藤の生存を確信する。一方、年齢を偽っていた柚乃が解雇されてしまった。


 安藤のことを信じたい智也は、志木駅前の喫茶店で話し合うが、改めて彼の非情ぶりを悟る。  

「あの骨は双子の弟のものだ。大学まで出たのに働かないから、家を追い出すと脅したら俺に力を貸した」

「それなのに殺したのか?」

「アイツのせいでエンゲル係数がバカにならない」

 その後、大輔から安藤逮捕の助力を促された智也は「決戦は6月17日」とケータイで告げた。


 智也と大輔の計らいで、クラブでの再就職を果たした柚乃は、智也を烈しく罵る。  

 柚乃の安藤に対する愛を知った智也は、大輔への協力を一時断念するが、病院を視察して安藤の流した害毒を目のあたりにして、安藤狩りに参加することを再度決意する。


 6月17日

 囮となって彼を朝霞駅前のクラブで待つ。店の裏口から現れた安藤は警戒を知るや下水道に飛び込み、ここに地下の追撃戦が開始される。

 安藤はコルトパイソンで何度も智也を撃ったが、全弾(6発)外れた。

 大輔の銃弾で重傷を負った安藤はその後、銃を手にした智也に追いつめられる。その銃は蘭丸たちとの闘いのときにも使ったものだ。銃を向ける智也に対して、安藤が冷たい笑みを浮かべた。

「あの2人、鬼畜みたかったよ」

「あの2人?」

「木南と長井さ……長年、あの会社の為に尽くしたのに切りやがって。しかも、12月だぞ?」

「去年のか?」

「あぁ」

「それで殺したのか?」

「あぁ」

 大輔は安藤の手首に手錠をかけた。

 

 6月18日

📰 日産自動車が「スカイライン」をモデルチェンジ。エンジンがV6となる。

「カッコいい、ほしいな〜」


 群馬県大泉町にある自動車工場に勤める沖田和也おきたかずやは、不況のあおりを受けて解雇され、幸福な生活から一転、借金生活になった。

 この日、和也は妻の公子きみこと共に太田駅近くにあるローン会社へ高い利子でお金を借りに行くが、そこに強盗が入る。何とか難を逃れた2人だが、公子はどさくさに紛れて10万の金をくすねてきていた。これをきっかけに、和也と公子は強盗を働くようになる。


 6月19日

2人は和也の元の会社の副社長、工藤謙也くどうけんやが贈賄の疑いで捜査を受けていることを知り、会社の金庫にある隠し金を頂こうと計画する。


6月20日

  神奈川県にある片田舎、夕凪町ゆうなぎまちでは連続殺人事件が起きていた。この日の午後10時、5人目の被害者が出た。

 これにショックを受けた町長は、この事件の特別捜査官として、神奈川県警刑事部の長瀬誠一ながせせいいちの弟、悠大を任命する。

 悠大は刑事であったが、あることが原因で行方不明になっていた。

 午後1時、智也は県警の一室にやって来た。

「長瀬、無事だったのか?」

 濱野華はまのはなが言った。華は夕凪警察署刑事課の警部だ。悠大に捜査のイロハを教えた刑事だ。

 智也は、唐津勇気から長瀬悠大の最期を聞かされていた。悪い人間に騙されて犯罪を犯してしまった。自分で死ぬのは怖いから、知人の勇気に首を絞めてもらって死に、勇気が遺体を処分した。しかし、悠大がずっと行方不明だと勇気が怪しまれるので、智也を整形して悠大のフリをしてもらうという算段だった。

「ずっとひきこもっていたんですよ」

「いろいろストレスの多い仕事だからな?」

 華は物腰は穏やかだが、男っぽい口調だ。

 

 6月21日

 智也は友人で、派遣社員の滝川千夏たきがわちなつ月島哲也つきしまてつやの協力を得てこの事件を分析していくうちに、犯行は八卦はっけが関わっていることを突き止める。

 最初の被害者の豊島夏樹としまなつきは別の場所で殺された後、夕凪公園の砂場に生首を置かれた。2人目の新島沼男にいじまぬまおは口から銃を突っ込まれて脳をぶち抜かれて死んだ。場所は夕凪海岸だ。3人目の根津紀彦ねづのりひこは目の上からナイフで突き刺され、それが脳を貫通して死亡した。4人目の芳賀博之はがひろゆきは両足を切断されて殺された。直接の死因は大腿部を刺されたことによる失血死だ。5人目の福沢平次ふくざわへいじは急所をナイフで刺された上に陰茎を切り落とされていた。

 

 千夏は、「阿部定あべさだを彷彿とさせる猟奇殺人だわ」と発言した。

「ゲートパークに出てるよな?」と、智也。

 金曜の9時から6チャンでやってる『池袋ウエストゲートパーク』は智也も好きで見ている。

 智也たちは、夕凪海岸近くにある月島のアパートで飲んでいた。月島がレモンサワー、千夏がコーラショック、智也がキリンラガービール。ツマミはポテトチップスのり塩味だ。

 月島は父親が占い師で、八卦に関して詳しかった。

「それは阿部サダヲでしょ?」と、千夏が親指についた海苔をチュパチュパ舐めた。

 阿部サダヲは最近ブレイクしてる俳優だ。

 智也はイヤらしいことを頭に描いた。

 月島のもあんな風にしゃぶったりしてるのかな?

 阿部定事件は、仲居であった阿部定が1936年(昭和11年)5月18日に東京市荒川区尾久の待合で、性交中に愛人の男性を扼殺し、局部を切り取った事件。事件の猟奇性ゆえに、事件発覚後及び阿部定逮捕(同年5月20日)後に号外が出されるなど、当時の庶民の興味を強く惹いた事件である。


 月島が八卦に関する詳細を説明した。


 けん

 天・健・馬・首・父・君などを象徴する。方角としては北西の方角になり、いぬの間であることから乾は「いぬい」とも読まれる。


 

 沢・悦・少女・口・羊・南東・西などを象徴する。

 

 

 外側に陽剛の卦、内側に陰柔の卦がある。原義は「一見明るいが中は暗い」。また「二つのものが一つをはさんで向かい合う」である。即ち火・光・稲妻(雷の光)・麗・雉・目・心臓・乳房・喜び·華やかさ・中女・別離対立・紛争・外見・赤(紫)色などを象徴する。方位としては南(地支では午)を示す。


 しん

 原義は最も下(創め)に一陽が生じて、限りなく前進する様子。ここから始動の時・雷鳴(雷の音)・龍・足・長男・若い男性などを象徴する。方位としては東(地支では卯)を示す。現代社会では電信電話・高速通信など。時に嘘つきにもなる。肉体では聴覚・肝臓・代謝など。

 

 そん

 風(木)・入・鶏・股・長女(結婚適齢期の女性)・縁談・長いもの一切・血管・毛髪・小腸・大腸・気管支・伏入・呼吸器などを象徴する。方位としては東南(地支の辰巳間)を示す。

 納甲では辛、五行の金、五方の西が当てられる。

 

 かん

 原義は「外陽にして中は陰」。外側に陰柔の卦があるが、内部は陽剛である。「中に何かがある」と捉え水・陥・豕・耳・秘密・姦計・色情・専門性・交渉・冷静・重病・中男などを象徴する。方位としては北(地支では子)を示す。実際の占断で坎の卦がでると病勢は重症か、かなりの困難を考えなければいけない。

 

 ごん

 山・止・狗・手・少男・鼻・胃・左足・相続・関節・骨格・節度などを象徴する。方位としては東北(地支では丑と寅の間)を示す。急激に暗闇から明るくなる時間帯(1時から5時まで)なので停止・再出発・つなぎめの意味もある。


 こん

 地・順・牛・腹・母・祖母・婦徳・胃・右肩・腹・補佐役・鈍重・大衆・迷いなどを象徴する。方位としては西南、すなわち地支の未と申の間、ひつじさるを示す。

 

「次の被害者は耳を切り落とされるってのか?」と、智也。

「多分……」

 月島は酔ったのか顔が真っ赤だ。

「あと3人も殺されるっての?怖いわ〜怖いわ〜怖いわ〜♪」

 千夏が山口百恵のある歌を歌っておどけた。

 月島は所在なさげだ。

「何だ?用事でもあるのか?」

「ツタヤでビデオ借りたんだ」📼

「ビデオって懐かしいな?まだ、DVDにしてないの?」

「結構高いよな?」

「みんなで見ようよ?」と、千夏。

「夜遅いから」

「まだ8時だけど」

 千夏はちらりと柱時計を見た。

「明日も仕事だろ?」

 月島や千夏はもともとは、智也と同じ『セグロ食品』に派遣されていた。しかし、東山は派遣に対し冷たく、貧乏なのを馬鹿にしたり、殴ったりしてきた。耐えきれなくなった2人は『セグロ食品』を辞めた。智也は、派遣会社のコーディネーターの北条麻美子ほうじょうまみこと仲が良かった。麻美子に夕凪町エリアの仕事を紹介するように頼んだ。

 月島たちは『三国ボールペン』に派遣されている。

 なるほどな、月島はエロビでも見る気でいるんだ。月島と千夏は同棲はしていない。今日は一人の夜を謳歌するつもりでいるらしい。

 智也のシナプスがパチパチ音を立てた。

 犯人は派遣社員の誰かだ!


 この日の夜、香川義政かがわよしまさが不在の自宅にて、凛子りんこと婚家から帰省していた娘の晴香はるかはピザ屋を装ってマンションに侵入した3人組の不良少年に襲われる。家には2万しか無かったことに腹を立てた少年たちは晴香をレイプし、抵抗する凛子を激しく殴打して逃亡した。

 娘婿の大森英吉おおもりえいきちからの連絡で病院に急行した香川であったが、凛子は息を引き取り、肉体的には無事であった晴香もまた事件のショックで重度の精神障害を患う。意気消沈する香川は妻の葬儀後に警察に捜査状況を聞きに行くが、容疑者特定の目処すら立っておらず、浦和署の担当刑事、石原亮輔いしはらりょうすけは凶悪事件が多発する埼玉エリアでは警察の手が足りていないと弁明する。


 25日の夜、自宅で窓の外を眺めた香川は不良少年らが通りの車の窓を割り騒いでる様子を目撃する。翌日、靴下と小銭で作ったブラックジャックをポケットに忍ばせた香川は夜道を歩いていたところ、自分を襲いに来た強盗を不意打ちで返り討ちにし昏倒させる。帰宅した香川はタバコで動揺する精神を落ち着けつつも、奇妙な高揚感を覚えていた。


 27日、午前8時……智也は北条麻美子からメールをもらった。

《長瀬君って普段はおっとりしてるけど、冴えてるんだね?『キングダム』っていう保土ヶ谷にある自動車工場に派遣されている、目黒茂助めぐろもすけって社員が昨日の休憩時間に占いの本を読んでいた。あとで、目黒の住所を送るね?》

 智也は夕凪駅近くの社宅から出て、ジョギングしながら夕凪署に向かった。🏃

 刑事部屋に入るなり、濱野華に経緯を話した。

「保土ヶ谷に急ぎましょう!」

 華が号令をかけ、智也たちは武器庫で銃を装備するとそれぞれの覆面パトカーに乗り込んだ。

 久々の運転に智也は緊張した。

 助手席に座る華はビクビクしていた。

 目黒の自宅は陣ケ下渓谷の近くにあった。横浜で唯一「渓谷」と呼ばれている谷で、帷子川の支流にあたる市沢川の渓谷。

 鎌倉時代に源頼朝の御家人である和田義盛が狩の陣を張ったのでこの名が付けられたとされる。

 横浜市水道局西谷浄水場の周囲に広がる保土ケ谷区の住宅街の中にあり、西側の台地上には県営西原住宅団地や公団くぬぎ台団地等の大規模住宅地が密着し、下流に当たる北側には相鉄本線(相模鉄道)、国道16号、帷子川本流が東西に走っている。林のなかではいたるところで湧き水がわき、横浜という都市部にもかかわらず、ある程度きれいな流れを保っている。ただし、前述のとおり上流は住宅地であるために生活排水もまぎれており、冬場など湧き水の少ない時期では泡がたつこともある。

 明確な源頭といいうる地点は知られておらず、周辺の民有地や住宅地からの雨水、横浜市水道局西谷浄水場から出る雨水等の濾過水、保土ケ谷高校遊水池からの流入水などを水源としており、周辺が住宅地や環状2号線として開発される以前は地下水からの湧出を水源としていたと考えられる。

 目黒宅をパトカーが包囲する。

 智也は渾身の力で鉄製のドアを蹴破った。

「アッ、アンタ、何者!?」

 華が声を震わせた。

 これから狩りでもする気だったのか?目黒は肉切り包丁を智也目掛けて投げて来た。智也は軽々と避けた。漆喰の壁に肉切り包丁が食い込んでいる。

「給料が少なくてゲームを売っちまってね?金がかからないゲームを考えたのさ」

 華がベレッタM92Fをホルスターから抜いて、目黒目掛けて撃ったがランバージャックシャツ(大きめの格子柄の厚手のウール素材を使った、両胸にポケットが着いたシャツ。ランバージャックは木こりのこと。)の下に防弾チョッキを着てたので、衝撃に慄いたものの、裏口から逃げた。

 智也は橋の真ん中に目黒を追い詰めた。

 殺された5人は全て、『キングダム』の正規の整備士だった。

「正社員がいなくなれば、採用される可能性が高くなると思ってね?」

 目黒は隠し持っていた拳銃を智也に向けた。新島を殺したときに使ったものだろう。

「考えが甘いな?正社員がいなくなるって事は会社が機能しなくなるんだ、『キングダム』はもう終わりだ」

 目黒の持っているのはトカレフという銃だ。

 正式名称を「トゥルスキー・トカレヴァ1930/33」Тульский-Токарева 1930/33(トゥーラ造兵廠・トカレフ 1930年/33年式)と呼び、略してTT-30/33とも呼ばれるが、一般には設計者フョードル・トカレフにちなみ、単に「トカレフ」の名で知られている。

 本来必須な筈の安全装置すら省略した徹底単純化設計で、生産性向上と撃発能力確保に徹した拳銃であり、過酷な環境でも耐久性が高い。第二次世界大戦中-1950年代のソ連軍制式拳銃として広く用いられた。

 1950年代以降、ソ連本国では後継モデルのマカロフ PMに置き換えられて過去の銃となったが、その後も中国を始めとする共産圏諸国でライセンス生産・コピー生産が行われた。中国製トカレフは1980年代以降日本にも多数が密輸入され、暴力団などの発砲事件にしばしば使われることで、一般人にも広くその存在を知られている。

 目黒はトカレフをぶっ放したが、智也はバク転して回避した。智也はホルスターからM92Fを遮二無二、目黒目掛けて撃った。銃弾は防弾チョッキを貫通し、目黒の心臓を破壊した。

「ハグァッ!!」

 蹌踉めいた目黒は谷底へと堕ちていった。

 

 27日の夜、上司の図らいにより、香川は横浜に赴く。本牧にある瀟洒しょうしゃなバーの客、長瀬はガンマニアで、自分の家族や財産は自分たちで守るべきだと語り、香川は感銘を受ける。

「私も愛する妻を失い、娘はおかしくなってしまった」

 ジントニックが胸に染みた。

 長瀬に誘われガン・クラブを訪れた香川は見事な射撃の腕前を披露し、彼を驚かせる。香川は普段は介護士として働いていて、お年寄りたちから信頼されているのだが、実は幼少時、猟師であった父親から銃器の扱いの訓練を受けていた。しかし、猟場での事故で父が亡くなると、母は香川に2度と銃を使わないと約束させ、それまで武器とは無縁の生活を送っていた。やがて開発交渉は成立し、香川は長瀬から餞別として包みを手渡された。


 翌日、浦和に戻ってきた香川であったが、到着早々英吉から晴香の精神障害が悪化し、精神病院に入院したことを伝えられる。帰宅した香川は失意のまま長瀬からの餞別を開封すると、中にはニッケルメッキされたベレッタM92Fと弾薬(.9ミリパラベラム弾)が入っていた。拳銃を懐に忍ばせ夜道を歩くポールは、自分を襲ってきた拳銃強盗を射殺してしまう。自宅へ逃げ帰った香川はショックの余り激しく嘔吐するが、やがて彼は夜な夜な街を散策し、裕福で無防備に見える自分に襲い掛かる強盗や暴漢たちを次々に拳銃で処刑していく。それに応じて香川の日常生活もかつてのような明るいものへと戻っていく。

  

 7月に切り替わり、暑さが増した。

 浦和警察署の石原は、この連続殺人が復讐目的の自警主義的な犯行であるとすぐに気づく。警察は謎の処刑人を糾弾するが、メディアや市民たちは『正義のヒーロー』と異名し称賛した。やがて石原は香川に辿り着き証拠も見つけるが、検察と署長は彼の活動によって街頭犯罪が激減していることや警察への市民感情の悪化を怖れ、香川の逮捕状請求を棄却し処刑行為を自主的に引退させるよう命令する。憤慨する石原は、匿名の電話で香川に犯行がバレていることを伝え、処刑行為を止めるよう警告するが、その程度では彼が収まらないことも予期していた。


 香川は自宅前で張り込む石原を出し抜き、3人組の強盗のうち2人をいつものように鮮やかに返り討ちにするも、1人には逃げられてしまう。追走の末に早撃ち勝負を挑もうとするが、失血により失神している間に強盗を取り逃がす。現場に到着した石原は香川と彼の拳銃を発見した、若い村田巡査に見たことをすべて忘れるよう命令し、香川を病院へと移送する。病室で香川は敗北感に苛まれながらも彼の罪を見逃し、浦和から去るよう命じる。『正義のヒーロー』が捕まったかと病院に駆けつけた報道陣に石原は、彼は強盗事件の被害者であると説明した。


 後日、香川は転職して浦和を離れ、夕凪駅に到着した。新しい会社の代表者が出迎える中、香川は駅構内で若い女性に嫌がらせをするチンピラの集団に遭遇する。女性に手をさしのべる香川へ挑発的な仕草を向けるチンピラたちに、ポールは指鉄砲を向けて不気味な微笑みを投げ掛けるのだった。

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