幕間17 友を見守る※エミーリア視点
「リア、聞いて。エトムント殿下はルド兄様狙いなの!」
いつものガゼボにやって来るなり訳の分からない事を言い始める友人。周囲に聞かれないように防音結界を施してから「とりあえず座って」と着席を促す。
どういう思考をしていたらエトムント殿下がルドヴィッグ様を狙うというのだ。
さてはエトムント殿下の事を考え過ぎて変な方向に拗れたに違いないと呆れた視線を送る。
「どういう事なの?」
「エトムント殿下にルド兄様について色々と教えて欲しいと言われたの」
「剣術の話でしょ」
今日エトムント殿下がエリーザに剣術の指南を頼むという話は聞いていた。人気の少ないところで話せる場所はないかと相談を受けたので図書室の奥を案内したのだけど。
どんな話をしたらこの結果になるのよ。
「きっと剣術以外についても教えて欲しいのよ!」
「リーザ、落ち着いて考えなさい」
「きっと勝負を勝ちたいのもルド兄様に認めて欲しいからだわ」
ルドヴィッグ様に認めて欲しいと思っているのは当たっているけど決してエリーザが想像しているようなものじゃない。
天才と呼ばれる騎士に勝って自分に自信を付けたいって気持ちとエリーザに近づきたいって気持ちが入り混じった結果、勝負をしたいと言っているのだ。
「リーザ、落ち着いて考えて。それはないでしょ」
「そうかしら…」
「むしろどんな考え方をしたらその結果になるのよ」
溜め息を吐きながら告げると「な、何となくそんな気がして」と返された。
どうせ自分でも分からないうちに滅茶苦茶な事を考えてしまったのだろう。彼女の悪い癖の一つだ。
「じゃあ、どうしてエトムント殿下はルド兄様に勝ちたいと思っているのかしら…」
鈍感だ。
私も人の事は言えないけどエリーザは自分の事になるとここまで鈍感になるとは。いや、自分の事だからこそ鈍感なのかもしれない。
「エトムント殿下に直接聞いてみたら?」
「え?教えてくれるかしら…」
「うーん、勝負が終わったら教えてくれるかもしれないわね」
エトムント殿下は勝つ前からエリーザの為に勝利したいと言えるような性格じゃないと思う。
私の返答が不満だったのか「何か知っているの?」と尋ねてくる彼女に笑顔を見せる。
「私が知るわけないでしょ。知っているとしたらクリスくらいよ」
それもそうだという表情を見せるエリーザ。クリスが相手だったら下手に質問攻めに出来ないのか「今度エトムント殿下に聞いてみるわ」と大人しく引き下がった。
「あ、そうだ。今日からエトムント殿下に剣を教える事になったのだけどリアと一緒に王城に行っても良い?」
「今日から始めるの?」
「善は急げというし、エトムント殿下からのお願いだから」
へらりと笑ってみせるエリーザ。彼女は大切な人の為にはすぐ動く人だ。そう考えると既にエトムント殿下を好いているような感じがするけど残念ながら本人に自覚はない。
私が出来る事は彼女がエトムント殿下への気持ちを自覚した後に選択する行動を応援する事だけだ。
「それで一緒に行ったら迷惑?」
「ううん、そんな事はないわ。一緒に行きましょう」
笑いかけるとエリーザは嬉しそうにお礼を言う。
彼女がどんな選択をしても私は彼女の味方で居続けようと思った。
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