第7話 参加したくない
翌日学園に行くといつもと違う話題が広まっていた。
それはエトムント殿下の婚約者探しをする為のお見合いパーティーのようなものが開催されるというもの。
「事実なの?」
親友エミーリアに尋ねると苦笑いを向けられる。
「あまり大きい声で言えないけど事実よ」
「へぇ…。早く婚約者が決まってくれたら良いのに」
そしたら私との噂も消えるのに。
「リーザ、大変言い難い事なのだけどパーティーには貴女も参加しなければいけないのよ」
「え?」
なんで?
私としてはエトムント殿下の、隣国王子の婚約者には全く興味がない。そもそも私みたいなガサツな女が王族になるのは不可能だ。
戸惑っている私にエミーリアは事情を説明してくれる。
「参加条件は婚約者が居ない貴族令嬢なの」
当たり前の条件だ。
婚約者が居た女性を他国に嫁がせるなどウィザード王国の品位に関わってくる。
そもそもゾンネ王国の男尊女卑の強さからして一度婚約破棄をした女性を迎え入れるのは向こうの男性貴族が嫌がるだろう。
それは置いておくして今はパーティーに参加するかしないかの話だ。
「行きたくないのだけど」
「無理よ。エトムント殿下の為に婚約者が居ない貴族令嬢達はみんな呼ばれる事になってるの。リーザも例外じゃないわ」
エトムント殿下の為に令嬢達を呼び寄せるのは分かるけど参加するかどうかは自分達で決めさせて欲しかった。
行ったら絶対に注目されるじゃない。
これ以上の面倒事は勘弁して欲しいわ。
「そんな嫌そうな顔をしなくても挨拶が終わったら帰って良い事になっているし、私も付き添ってあげるから」
「付き添うってリアにはクリストフ様が居るじゃない」
「リーザの見張り…じゃなくてクリスもパーティーに顔を覗かせるから婚約者として来て欲しいってお願いされたのよ」
今見張りって言ったわね。
どうせ私が余計な事をしないようにクリストフ様が仕組んだのだろう。
その考え方は認めたくないけどエミーリアが居てくれるのは心強い。
「本当に挨拶だけしたら帰って良いのよね?」
「陛下が許可してくれるわよ」
「仕方ないわね…。行くだけ行くわよ」
偉そうに言える立場じゃないけど全てはエトムント殿下が招いた事態のせいだ。
余計な噂があってもなくても挨拶だけしたら帰ると思うけどね。
「それにしてもウィザードで婚約者探しをする意味ってあるの?」
「さぁ、そこまでは。でも、ゾンネ王国で婚約者探しが出来なかったって話は前に聞いたわ」
「リアには色々と話すのね」
「友人だからね」
紅茶を飲みながら隣国王子を友人だと言ってみせるエミーリア。未来の王妃である彼女なら友人であってもおかしくないのだろう。
未来の王妃か…。遠くに行っちゃうのよね。
エミーリアとクリストフ様の結婚式は再来年。彼女の学園卒業と共に行われる予定となっている。
「リアが結婚しても友人で居たいわ」
「急にどうしたの?」
「よく考えたらリアってもうすぐ王太子妃になるでしょ。それでいずれは王妃様になるじゃない。立場がつり合わないわ」
「私達は親友よ。何年経ってもね」
こちらが悩んでいるというのにエミーリアはあっさりと言ってしまう。
こういうはっきりしたところが大好きなのだ。
「でも、立場で悩むならエトムント殿下の妃になったら良いじゃない。次期王妃同士になれるわよ」
さっきの大好き発言を返して貰いたい台詞が飛び出てくる。
無言で圧をかけていると申し訳なさそうに頭を下げるエミーリアがいた。
「ごめんなさい。冗談で言っただけよ」
滅多に冗談を言わない子なので本気で思っているのかと思った。
親友の冗談も見抜けないなんて私もまだまだね。
「リア、クリストフ様に似てきたわね」
嫌がらせのつもりで揶揄うように言ってみる。
真っ赤になって恥ずかしそうに項垂れるエミーリアに久しぶり揶揄う事が出来てすっきりした。
「しばらく揶揄われていなかったから油断したわ」
「噂が落ち着いたら盛大に揶揄ってあげる」
「それは勘弁して欲しいわ」
苦笑する親友に「嫌よ」と笑ってみせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。