第33話 一件落着?
「僕のリアが男を誑かす悪女だって?ふざけないでくれないかな?」
私を抱き締める力を強めたクリスは低い声を漏らした。
三人組は怯えた様子を見るが言葉を続ける。
「ホルヴェーク侯爵令嬢はクリストフ殿下だけじゃなくエトムント殿下にも言い寄るような女ですよ!」
だから言い寄ってませんって。
「おまけにエトムント殿下とお出かけされた後クリストフ殿下とお出かけなさるなんてふしだらですわ!」
私の意思とは関係なく決まった事ですけどね。
「ほ、他の殿方とお付き合いされているという噂も」
「へぇ、それって誰の事?リアと付き合っている男がいるなら出てきなよ」
クリスは周囲に声をかけるが顔を見合わせるだけで誰も出てこようとしない。まあ、クリス以外に付き合っている男性が居るわけないので当たり前ですけど。
「居ないみたいだよ」
「そ、それは言い出し辛いだけで」
「ああ、そうだ。エト、君はリアに言い寄られたかい?」
クリスは子爵令嬢の言葉を遮るようにエトムント殿下に声をかけた。
エトムント殿下は一瞬驚いた表情を見せたがすぐに厳しい顔付きになり前に出てくる。
「事実無根だ。昨日はクリストフ殿下とホルヴェーク侯爵令嬢とそれから…ビューロウ伯爵令嬢の四人で出かけていたからな」
堂々と嘘つきましたよ、この人。
巻き込まれたエリーザは驚いた表情をする。
おそらく男性二人と女一人で出掛けるのが不味いから言った嘘なのでしょうけど、エリーザの目付きが怖い。
「誰が流した噂か知らんがくだらないでっち上げ話をするのはやめていただきたい。でなければゾンネ王国としてもそれなりの対処をせねばならないのでな」
二人と出かけていたのはでっち上げじゃないのですけどね。それにしてもエトムント殿下が変な汗を掻いているのはエリーザの睨み付けが彼に突き刺さっているからだろう。
なに余計な嘘ついているのよって感じでしょうね。
「というわけで昨日の件は誰かのついた嘘って事になるね。リアに関する噂も徹底的に調査しようかな。誰が流し始めて、誰がくだらない事を鵜呑みにしたのか調べた方が良いと思わない?」
クリスの悪魔の如き笑みで周囲の顔色が変わる。
私の噂を喋っていた人達は恐怖で眠れない日々が続くでしょうね。事実が混じっているだけに申し訳ない気持ちになります。
「リアはウィザードの未来の王妃だ。くだらない事をしないようにね」
全員が怯えた表情で頷いた。
これで一件落着…かと思ったら。
「エミーリア様のお相手がクリストフ殿下なら、エトムント殿下のお相手はエリーザ様なのかしら…」
誰かが零した言葉が大きな波乱を呼ぶのはもう少しだけ後のお話
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