幕間3 好きな人を救出※クリストフ視点
リア達のところに辿り着くと先にエミの猿轡と縄を解いた。俺の威圧に酔ったのか気絶している彼女を椅子に寄り掛からせてからリアに視線を移す。
胸元が肌蹴ており、下着が見えてしまっている。
それを見た瞬間、収まっていた怒りが再発しかけるがどうにか抑えて彼女に自分の上着をかけた。
「リア、平気か?」
「ん……えと、むんと、でんか?」
先にリアを起こしたのはエトだった。
思わず彼を睨み付けてしまうのは自分が先に起こしたかったから。
つまらない嫉妬だと分かっているが彼女の一番は自分じゃないと嫌なのだ。
「リア、大丈夫か?」
「クリス、わたし…」
「もう大丈夫だ」
縄を解いてやれば、彼女の腕が首に伸びてくる。どうしたのだろうと首を傾げるとそのまま抱き着かれた。
唐突な事に驚きながらも何とか受け止めてやる。
「クリス…!」
泣きそうな声で名前を呼ばれて、不覚にも胸が熱くなる。
いやいや、リアは今弱ってるんだ。変な事を考えるな。
彼女の背中に腕を回して、そっと撫でてやれば首元で鼻を啜る音が聞こえてくる。
怖かったのか。そりゃあ、怖いか。気絶させられた上で連れ攫われたのだから。それに服まで…。
「ごめんなさい…」
怒りに歯を食いしばっていると小さな声で謝罪をされる。唐突な謝罪の意味が分からず「どうした?」と尋ねると掠れた声が耳元に聞こえた。
「孤児院を出る前にクリスに声をかけるべきだったわ」
「そうだな。心配したんだぞ」
「ごめんなさい」
「俺の方こそすぐに助けられなくて悪かった」
「ううん、助けてくれたわ。ありがとう」
落ち着かせようと背中を摩ってやれば抱き着いてくる力が強くなる。小さな頭を抱えながら抱き締め直す。
「リア、確認だが服を刻まれた以外に何もされていないんだよな?」
「分からないけど…。どこも痛くないし、多分だけど何もされていないわ」
「念の為、後でカルラに確認してもらえ」
俺の言葉にリアは小さく頷いた。もう一度リアを抱き締め直そうとしたところで睨み付けてくる視線に気が付いた。
エトだ。
完全に存在を忘れてた。声をかけようとするが遮ったのは俺の腕の中にいたリアだ。
「あ、そうだわ!エミは?」
一瞬で距離を取り、エミの姿を探すリアはもう涙を流してなかった。
切り替え早いな。
もう少し抱き締めていたかったのに。
「大丈夫だ、エミはそこで眠っている。何もされていない」
俺が威圧をかけてしまった以外は、だけど言うと怒られそうなので黙っておく事にした。
リアは安心しきった表情で「良かった…」と呟いた。
眠っているエミを起こさないように抱き締めて何度も謝罪をする彼女を見つめていると背中を叩かれる。
「……クリスとリアは仲良いんだな」
「幼馴染だからね」
「羨ましいな」
泣きそうな声を出すエトに申し訳ない気持ちになるが、リアを譲るつもり気は一欠片もない。
「孤児院に帰ろうか」
エミを抱き上げるリアに声をかけると笑顔で「そうね」と返された。
結局デートらしいデートは出来なかったな。
それだけが心残りだった。
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