幕間4 友の怒り※エトムント視点
エミーリアと別れて一人で町の探索をしていた。
その途中でぶつかったのは予想外の人物。
「クリス?どうした?」
「エト、退いて。急いでいるんだ」
驚いている俺を他所にクリストフは構っていられないという風に走り出す。私は彼を追いかけた。彼の側にいるはずの人物が見当たらないからだ。
「待て、何があった?リアはどこにいる?」
「おそらく攫われたんだ…」
「なんだと」
苦い顔をするクリストフを私は睨み付けた。
どんな状況で彼女が攫われたのか分からないが彼が側にいたのは確かだ。それなのに守れなかった彼を許せなかった。
「既に居場所は分かってる。今向かってるんだ」
「……私も行く」
クリストフに拒否権を与えるつもりはない。
そう思っていると彼は小さく頷いた。
「リアの他にも小さな女の子が攫われてる。二人を助けるのに協力してくれ」
「任せろ」
エミーリア以外にも攫われた女の子がいる?
一体どういう状況だったんだ。
走りながら聞かされたのは二人が孤児院に行っていたという事、孤児院の少女とリアが二人で攫われた事。
クリストフの予想ではあるがそれなりの魔法の使い手であるリアが攫われたのは誘拐犯達に小さな女の子を盾にされたからだという事だった。
下衆な奴らはどこの国にもいるものだ。
辿り着いたのは錆れた倉庫だった。
「貴様ら何をしてる」
「な、ど、どうやって、ここが…」
中に入るとクリストフの低い声が響いた。
驚く男達に向かって駆け出したのは彼だ。私も後に続いて誘拐犯達を気絶させていく。
ようやく最後の一人になった。そいつの顔を確認すると驚きのあまり固まる。
「お前はさっきの…」
残った男は私がカフェで追い払った男だったのだ。
「てめぇ!」
襲いかかってくる男を投げ飛ばして地面に叩きつけると不愉快な声を上げ始める。
「くそ、離せ!お前のせいで恥を掻いたんだぞ!」
「お前が店で騒いだせいだろ!」
「うるせぇ!お前の女だって傷つけてやったんだ!」
「なに?」
それを聞いた瞬間、動きが止まった。
お前の女?
あの時に一緒にいたのはエミーリアだった。つまりこの男が傷つけたのは…。
振り返り彼女の姿を確認すると服が切り刻まれていた。
私のせいでリアを傷つけた?
怒りが湧き上がってくる。
「ふざ…」
「ふざけるなよ」
私よりもずっと低い声を出したのは一緒にここまでやって来たクリストフだ。
彼を見ると今にも怒りで顔が歪み、凄まじい量の魔力が溢れ出していた。錆れた倉庫はガタガタと音を立てて崩壊寸前。しかし彼はそれに構う事なく男に近寄って行く。
「貴様、リアに何をした?」
男の胸倉を掴んだクリストフは怒り狂っていた。
「や、やめ…」
「何をしたと聞いているんだ」
「な、なにも、して…ない…」
気絶した男を投げ飛ばすクリストフは今にも殺人を犯してしまいそうだった。一国の王子が私情に任せて人殺しをするのは許されていない。慌てて止めに入る。
「く、クリス、怒るのは分かるが今はリアを…」
彼に近寄ると威圧が凄まじく気分が悪くなる。
情けない顔をしながら彼を止めると落ち着きを取り戻したのか広がっていた魔力が収まっていく。
そしてリアの元に駆けて行くクリストフを私も追いかけた。
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