第24話 計画の裏側②

「ところでアルバン馬鹿は置いておくとしてハッセル子爵令嬢阿婆擦れはどうしますか?」


どこか沈んだ空気の中、声を出したのはクリストフ様でした。確かに今のはお馬鹿さんに対する制裁の話でした。

しかし私は阿婆擦れさんに対して制裁を加えたいと思うほど迷惑をかけられていないのでどうしてやりたいとかはないですね。

ここは王家に任せた方が、と思ったところで声を発したのはお父様でした。


「阿婆擦れは王族と結婚が出来ると思っていますよね」

「うむ」

「では、王族ではない馬鹿と結婚させてやれば制裁になりますよ」


お父様、良い笑顔ですね。

陛下は頬を引き攣っていますし、クリストフ様も乾いた笑い声を出していますよ。


「では、王命で馬鹿と阿婆擦れの婚約を成立させよう」

「父上、良いのですか?」

「良い。父として最後の贈り物だ」

「好きな方と結ばれる事が出来るのですからあの子も幸せになりますよ」


冷たく突き放す陛下と王妃様にはもう迷いはないみたいです。

これで良かったのかと思うが、おふたりが決めた事なのだから口を出すべきではないのだろう。


「ところでリア。証拠や証人はどうなってる?」

「お父様。その辺りは抜かりありません。既に証拠も証人も揃っていますわ」


お馬鹿さんが阿婆擦れさんに贈った物のリストや金額は既に側近の方から入手済み、購入した商人にも証言の執筆を頂いております。

また私に暴力を働いた事を目撃した方々にもパーティー当日の証言を約束してもらってます。

あのふたりに味方はいません。お互いだけが味方です。

さて、どこまでお互いだけを庇いきれるでしょうね。


「私の方も問題ありません。いらっしゃる夫人達にも噂の根回しは済んでいますし、パーティーが終わった後は面白おかしく話を広めてくれますわ」


お母様は黒い笑みを浮かべた。

いつの間にそんな事をしたのですか。

社交界の華と呼ばれるお母様なら一瞬で広められそうですけど。

私達の答えに満足したように頷くお父様。


「私の方も大臣達には面白い物が見られると伝えてあるし、彼らはリアを好んでいるからな。こちらの味方だ」


愉快な笑顔を見せるお父様に「嘘ですよね」と叫びたくなる気持ちを抑えた。

確かに大臣達とはお馬鹿さんの公務を代行している時に親しくなりましたが、そこまでするとは。


「当日が楽しみだな」

「えぇ、面白いものが見れると良いのですけど」

「楽しんで頂けるように頑張りますわ」


ワクワクした様子で腕を組むお父様。

待ちきれないといった様子で寄り添うお母様。

握り拳を作って、二人に笑いかける私です。


「……この家族怖い」


陛下が弱々しく呟きました。

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