第12話 親友の怒り
「なんなの、あの子!」
「リーザ、ここ教室だから…」
教室に着くなり大声を上げて、地面を蹴るエリーザ。怒る気持ちも分かるが落ち着いてほしいと背中を摩って宥めた。
あたりを見渡せばクラスメイト全員がこちらを見て唖然とした表情をしている。
驚かせてしまって申し訳ないと頭を下げて謝れば、見ないように顔を背けてくれた。
「リア、あれ本気で潰していいからね。手加減不要だから!」
両手を胸の前で握られる。
闘争心に満ちた瞳と強く握られた手から感じる熱気に当てられて頷くしかなかった。
「え、えぇ…」
ふんっと勢い良く鼻を鳴らす姿は名門伯爵家のご令嬢には到底見えなかった。
どうして急に怒り始めたのでしょうか?
私の事を言われただけでエリーザの事を言われたわけでもないのに。
「リーザが怒ることないのよ?悪く言われたのは私なのだから」
エリーザの動きが一瞬止まった。
ぎこちなく振り向いた彼女は苦々しい表情を浮かべていた。
「普通、親友が馬鹿にされていたら怒るに決まってるでしょ?」
「親友?誰と誰が?」
「私とリアに決まっているでしょ!」
私とリーザは親友なのかしら…。
考えた事もなかった。
そもそも親友の定義ってなに?
よく分からないわ。
「え、違うの?思ってるの私だけ?」
泣きそうな顔を向けてくるエリーザに慌てて首を横に振る。
そんな顔をさせたかったわけじゃないのに。
「違うの。親友の定義が分からなくて…」
「定義って…。確かにリアはちょっと固いかもね」
呆れ返った声で言われてしまう。
「もしもさっきのリアの立場が私だったら、リアは怒ってくれてた?」
「そんなの当たり前でしょ?」
当然の事を聞かないで頂戴。
エリーザが馬鹿にされていたら私はきっと彼女に威圧を放ち、口汚く罵っていたでしょうね。
「リーザは大切な友人だから怒るわ」
「うん。私も同じ。ちゃんと分かってるじゃない」
「分かってる?なにが?」
私の返答に忍笑いをするエリーザ。
答えを考えてみるが分からない。降参だと言うように両手を挙げて見せれば今度は大笑いされる。
ひとしきり笑った後、挙げた両手を握られる。
「大切な友人ってことは親友ってことなのよ」
「あっ…」
「もっと物事を柔らかく考えなよ」
揶揄うように笑うエリーザに手を引かれながら席に向かった。
親友。
そう、エリーザは親友なのね。
私の初めての親友。大切にしないとね。
「こういうの青春って感じだね」
「青春ってなに…?」
「知らないの?ロマンス小説によく出てくる言葉だよ!」
「ロマンス小説は読まないのよ」
「今度貸すよ!面白いから読んでみて!」
楽しそうに好きな物の話をする親友。
笑顔の彼女につられて笑った私の頭からは
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