第7話 第一王子との再会

陛下と別れて部屋を出たところで名前を呼ばれた。


「リア?」


聞き覚えのある声に振り向ければ、久しぶりに会う人物がいた。


「クリストフ様」


クリストフ・フォン・デッケン。

婚約者様の一歳上のお兄様でこの国の王太子殿下。

第二王子とは正反対な人物で品行方正、文武両道、真面目な好青年で皆に慕われている存在です。

私の幼馴染でもありますね。

しかしクリストフ様は一年前から隣国に留学に行っていたはず。

どうしてここに居るのでしょうか?


「久しぶりだね、リア」

「お久しぶりです。クリストフ様、留学されていたのでは?」


疑問に思っていた事を尋ねると「ああ」と明るい表情を向けられる。


「もう終わったよ。昨日帰ってきたんだ」

「そうだったのですか」

「あれ?手紙を書いたんだけど届いてない?」


そういえば数日前に手紙をもらっていたような。

最近色々と忙しくしていたのでちゃんと確認出来ていませんでした。

反省しなくてはいけませんね。


「もしかして確認し忘れてた?」

「はい…。申し訳ありません」

「別に良いよ。リアの事だから忙しくて確認出来ていなかっただけだろうし」


流石は幼馴染といったところでしょうか。

私の事をよく分かっていらっしゃいますね。

苦笑いを向けると「やっぱりね」と笑われてしまうので謝罪をする。


「手紙の事は置いといて暇しているならお茶でもどうかな?」


相変わらず気さくな方です。

昔から私を妹のように可愛がってくれているのですよね。本当に有難い事です。でも、その関係もすぐに終わってしまう事になるでしょう。主に婚約者様バカのせいで。


「でも、クリストフ様は帰ってきたばかりでお忙しいのでは?」

「大丈夫だよ。それより昔みたいにクリスと呼んで」


クリス。

それは小さい頃に呼んでいたクリストフ様の愛称だ。

数年前、彼が王太子になってからは呼ぶ事もなくなりました。呼んで良いのか分からなくなってしまったからです。

だから今更呼ぶのはちょっと恥ずかしいのですが。


「呼びたくない?」

「出来る事ならクリストフ様と呼びたいと思っております」

「リアは変なところで頑固だからな。諦めるしかないかな」


頑固なのでしょうか。

でも、クリストフ様が言うならそうかもしれませんね。


「とりあえず、お茶にしよう?お互いに溜まっている話をしたいから」

「ご迷惑にならなければご一緒したいです」

「迷惑と思っていたら誘っていないよ」

「それもそうですね…」


変なリアと笑われてしまいます。


「じゃあ、行こうか」

「はい、クリストフ様」


私は流れるような彼のエスコートに身を任せた。




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