第6話 陛下との会話
「リアとアルバン、二人の婚約の破棄を認めよう…」
ゆっくりと頭を下げようとする陛下を慌てて止めます。
今回の件は陛下が悪いわけじゃありません。
それに国の主である国王陛下からの謝罪は貴族の娘である私には荷が重過ぎます。
「陛下、謝罪は要りません」
「しかし…」
「謝罪の代わりに一つだけお願いをしても良いでしょうか」
陛下にお願いなど尊大な態度だと重々承知しておりますが、それでも私は自分から婚約の破棄を婚約者様に叩き付けてやりたいのです。
「良いだろう。言ってみなさい」
あっさりと了承してくれる陛下の言葉に甘えさせてもらおう。
「婚約を破棄するタイミングを私に決めさせて頂きたいのです」
私が願いを言うと陛下は首を傾げた。
「つまり今は婚約したままでも良いと言うのか?」
「もちろんです。ただアルバン殿下との婚約を破棄する気持ちは変わりません」
希望に満ちた瞳が一瞬で絶望の色に染まる。
期待をさせてしまったみたいで申し訳ないのですが、婚約者様のあの太々しい態度を見ていると婚約者で居続けるようという気持ちにはなれそうにありません。
「分かった。リアの好きにすると良い…」
力の篭っていない返事を送られた。
落ち込む陛下を見ると罪悪感を煽られる気分になってくる。
「陛下達のご期待に沿う事が出来ず申し訳ありません」
「いや、リアはよくやってくれていた。妃教育も、アルバンの公務の代行も…」
王子妃教育については陛下達に報告が上がっていると知っていましたが、婚約者様の仕事の肩代わりをしている事を知っていたのは驚きですね。
あの婚約者様の事ですから直接は話してなさそうなので、おそらく他の方から聞いたのでしょう。
「リアが私の義娘になってくれる日を心待ちにしておったのだが、どうしてこうなったのだろうな…」
陛下は濁った瞳を遠くの空に向けた。
「申し訳ございません…」
「よい。あれが悪いのは私も分かっておる。リアに落ち度がない事も知っておる」
私も陛下達と家族になれる日を楽しみにしていましたよ。
その気持ちは声に出してはいけないと思った。出せば余計に悲しくなってしまうから。
「婚約の破棄の書類はこちらで揃えておく事にしよう」
「よろしいのですか?」
「当然だ。私はリアの味方だからな。ディアナも同じ気持ちであろう」
「ありがとうございます」
立ち上がり、腰を折りながら頭を下げて礼をする。
「それでは失礼させて頂きます」
「うむ。また会おう」
「はい」
陛下に挨拶をして、部屋を出る。
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