第5話 血の涙を流しながらハンカチ咥える

目が覚めた。が、何も見えない。身体も上手く動かない。

目元を触るとどうやら包帯を巻かれていたらしい。


「ッ!ユーダイくん!」


ミオネの声がする。


「ミオネか、ちょっと身体が上手く動かないから起きるの手伝ってもらえないか?」

「わかった。でもその前にリリィお母さん呼んでくるから待ってて!」


ミオネはそういうとパタパタ出て行った。

数分後、多数の足音が聞こえた。


「ユーダイ!このおバカ!!どれだけ心配させる!」

入って来たリリィ母さんに怒号と一緒にゲンコツも貰った。


「いたっ!母さん、俺、目が覚めたばっかなのに酷いよ」

「無茶するアンタが悪い。けど無事でよかった」


そういうと母さんは俺を優しく抱きしめた。


「親になるまで自分がこうなるとは思いもしなかった。あの人が亡くなってすぐにユーダイも死ぬって思ったら震えが止まらなかった。心配したんだからね。でもよくミオネを守った。流石は私たちの息子だ」

「母さん・・・心配かけてごめん」


こんなに震える母さんみたの初めてだなぁ。いつも凛としてカッコいい母ちゃんだと思ってたから尚更に。


それからあのときの状況を今一度、説明させられた。血が流れた跡を見て念のためにとしてあった包帯をとって目を診断されたが、何の異常もなく黒目に戻っていた。


「ユーダイくん、これ」


今までジンさんの近くでみていたミオネが一冊の本を手渡してくれた。


「これは?」

「ユーダイくんが倒れたときに空から落ちて来たの。なんとなく持って来て中を読んだけど魔法のページ以外読めなかったの」


そう言われて本の表紙を見る


《【世界記録】》


間違いなく俺のスキルの名前だった。

本を開いてページを捲る。


《【異界伝承】により獲得能力及び人物の情報》


おいおい、これ、グレーゾーンじゃないか!

下手したら1発アウトだぞ?

人物情報なんて使用出来る技まで書いてあるし使ってない技で使えるものまで書いてある。

あの時の状況からしてサ○ケくんをイメージしたけど改変されたとは言え、写○眼とか天○、○鳥を使った訳だし中々ヤバいスキルだと実感した。

特殊系以外は、魔法に分類されて再現可能になったわけだし。

技名なんてノーネームで決めろとまで書いてある。改変した影響か?


「ミオネ。ちなみに読める項目は?」

「えっとね、あの黒い炎と白黒の雷だけ。たぶん、適性的に私が使うには魔力量が多過ぎると思うの。でもこの3で混合魔法は使えるようになったんだ」

「はぁ!?俺、3日も寝てたの!?」

「そ、そうだよ」


そういうとミオネは、何故か顔を赤らめソワソワし出した。


3日も寝てたのかぁ〜。きっと副作用の影響だろうな。

ん?そう言えば【異界伝承】の副作用って発情だったよな?今のところ、マイサンは落ち着いてる。どう言うことだ?


「そう言えば母さん。俺、【異界伝承】のふ・・・・・・むぐっ」

「息子よ。副作用はきっと寝て解消されたんだ。それ以上聞くのはよせ。聞くな。そして、10になるまで【異界伝承】の使用を禁止だ。今、混合魔法と基礎のレベルアップを訓練する」


母さんは鬼気迫る笑顔でそれだけを言った。ハイネさんはニコニコしてるけどジンさんは、血の涙を流しハンカチを咥えてる。


俺寝てるうちに何かした?怖くて聞けない。


そして、その日以降、ミオネは一緒に寝ようとしてくるがジンさんに阻止され、親子喧嘩に発展して行った。

結局、ハイネさんがジンさんに何かを言って渋々了承した。


その日以降、ミオネと毎日同じベッドで寝ることとなった。





それから5年後、日々の訓練や勉強により10歳になった俺とミオネはリリィ母さんとハイネさん、ジンさんに合格を貰い、近くの街にある冒険者ギルドで冒険者登録をするために街へ初めて出掛けることになった。



そして、ミオネにとっては生涯の親友、俺にとってもかけがえのない人となる1人の少女と出会う。

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