第4話 守るから

俺は5歳になり、親父は42歳でが亡くなった。

最後の言葉は、


「リリィ、ジン、ハイネ、ユウダイ、ミオネみんな愛してるぜ」


本当に最後まで豪快な親父だった。

家族を大切に想い、信じぬく、その強い強い志は、俺にちゃんと受け継がれたよ。親父。



親父の葬式の後、村の近くにある湖に俺は1人で来て、誰にも見られることのないように隠れて、隠れて泣いた。前世の分まで泣いた。


「ユーダイくん、大丈夫だよ。私が側にいるからね」

「ミオネ・・・」


背後から優しく抱き締められる。

その手は、微かに震えていた。


「どうしてここがわかったの?」

「ここにユーダイくんがいると思ったから」


やっぱり、ミオネにはどこにいるかがわかちゃうんだ。敵わないなぁ〜。


「当たり前だよ、それに私はユーダイくんの奥さんだよ?お母さんが言ってたの。奥さんは、旦那様が悲しい時辛い時に側にいて支えて楽しい時や嬉しい時は一緒に喜んだり笑ったりするんだって」


あぁ〜、この子は強い。第二の父が亡くなって辛いのは同じはずなのに。

この子を守らなきゃ。心と笑顔を何としてでも守らなきゃ。


「ミオネ、ありがとう。君のおかげで少し気が楽になったよ」

「本当に?無理してない?」


心配そうな顔で聞いてくるミオネの額にキスをする。

照れたのか俺の胸に顔を押し付ける。


「みんな、心配するしそろそ・・・」


ドンッ!バキバキッ!!


大きな音がしたと思ったら白と黒の塊が飛び出してくる。

俺は、ミオネを庇い塊を観察する。


白銀の毛並みをした狼とよく母さんが狩ってくるダークウルフの群れだった。


ダークウルフは、白銀の狼に集団で襲いかかっていた。


俺たちは、息を殺しゆっくり後退する。


一歩、また一歩、ゆっくり下がって慎重に。

ミオネも理解して、同じように息を殺す。


このまま気付かれずに。気付かずに。

丸腰で戦えるわけでもなく心の中でそう祈らずにはいられない。


1匹のダークウルフがこっちを振り向いて動きを止めた。完全に気付かれた。

白銀の狼との戦闘から離脱してゆっくりこっちに歩いてくる。


ダメだ。逃げれない。戦うにしても武器がない。どうする?どうする?どうする?


ミオネは、俺の服を掴んで震えてる。

守らなきゃ、この子だけでも。

息が乱れる。身体が震える。『死』と言うものが近づいて来る感覚がする。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


迷ってる暇なんてない。リスクは無視。

やるしかない。ぶっつけ本番で。


俺は、腕を回してミオネを抱き寄せた。


「ミオネ。守るから。しっかり、捕まってて」


どこまで上手くいくかわからない。

頭に物語の登場人物を思い浮かべる。


「【異界伝承】」


ドクン・・・ドクン・・・


目を瞑り、身体中に何かが駆け巡る感覚を実感する。イケる。そう思った。


「うぉぉぉぉっ!」


俺は目を開けダークウルフを睨む。俺の目がの模様が浮かび変化した。


ダークウルフは、いきなり後ろに吹っ飛びに包まれた。


「はぁ・・・はぁ・・・」


イメージ通り、上手くいった。

けど右眼から液体が流れる感覚がした。


《能力を確認しました。オリジナルに変換し【八芒星の魔眼】を【世界記録】に記録しました。闇属性と火属性の混合魔法を習得しました。以後、使用出来ます。》


頭の中に声が響いた。


他のダークウルフが異変に気付き、ターゲットを白銀の狼からこっちに変えた。


「ユーダイくん、その眼・・・血が出てる・・・それに【異界伝承】って」

「ミオネ、殲滅するから。離れないで。帰って説明するから」

「うん、わかった」


ミオネが何か言いたそうな顔をしたけど、今は構ってやれない。ミオネを右腕だけで抱き寄せ、自由になった左手に力を込める。


バチッ・・・バチバチッ・・・バチバチ・・・ヂヂヂヂヂッッッ!!!!


手から黒白の電撃が放出される。


《闇属性と雷属性の混合魔法を習得しました。》


「出血大サービスだ!この野郎」


向かって来るダークウルフたちを掌で払い除ける。吹き飛ばされたダークウルフたちは起き上がれず絶命する。


最後の1匹を払い除けた後、よろけた。

目も霞む。両目から血が流れる。左手も微かに出血してる。身体に力が入らない。

倒れそうになったが、ミオネが支えてくれた。


「ありがとう、ミオネ。怪我はないか?」

「ユーダイくん!なんで・・・なんで無茶するの」

「あはは。俺の大好きなミオネを守るのに全力でいかないと。でもちょっと疲れたから座りたいや」

「なんで笑ってるの!?私・・・私が・・・グスッ・・・どんなに・・・心配したと・・・グスッ・・・思っ・・・てるの」

「ごめんごめん。大・・・好・・・き・・・・・・ミオ・・・ッ」

「えっ、ユーダイくん!?」



俺は、ミオネに抱き着いたまま意識を失った。


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