第2話 エロガキが
暖かい。安心する。こんな気持ちになるのは久しぶりだ。
親父に頭を撫でられた時みたいに。
「おぎゃ〜おあぁぁ〜」
「ははっ、元気に生まれて何よりだ。頑張ったな、リリィ。」
「当たり前だ。旦那様と私の子だぞ。だが、少し疲れたよ。」
どこか懐かしい声が聞こえる。
母親の名前は、リリィって言うんだ〜。
まだ目が開けられないから親の顔を見ることが出来ない。
「それで。名前はどうする?旦那様」
「ん〜〜、俺の遺伝子が強いのかやっぱ黒髪だよなぁ。瞳の色はリリィに似て赤なのか?」
「遺伝子?あぁ〜血筋のことか。いや、さっきチラッとみたが瞳は黒色だ」
「んん〜〜〜、よく見ればよく見るほど昔の倅に似て見えちまうわ」
この親父、バツイチか?親権相手に取られたと言うことは、俺に兄がいるのか。
「ちなみに名前は、なんて言うんだ?」
「あぁ、雄大って名だ」
はぁ!?
「そうか、ならその名を貰ってもいいかな?」
「なんか変な気分だが、こいつを見てるとそれが相応しいって思っちまう。お前は、今日からユウダイだ」
待て待て待て、これはもしかしなくてまさか・・・・・・
コンコンッガチャ。
「リリィちゃん、コーダイさん、おめでとう」
ハイ、カクテイ。
転移者発見。しかも15年前の行方不明者発見。異世界を良いことに新しい妻ですか。左様ですか。
このクソバカ親父ッ!!
「ハイネ、私は頑張ったぞ。次は、君の番だからね」
「はいはい、私もリリィちゃんに負けないように頑張りますよ。そうそう、コーダイさん、ウチのジンが投げナイフ10本お願いだそうよ」
「おうよ、ついでに早いが出産祝いで新しい包丁も俺からプレゼントしよう」
「まぁ!!嬉しいわ」
ハイネと呼ばれた女性は嬉しそうにそう答えた。
翌日、このハイネも元気な女の子を出産する。このとき、もうすでに運命の歯車は回り始めたのかもしれない。
月日は、3年が経つ。
「ミオネ、今日もとっくんをするぞ」
「うん、ユーダイくんといっしょ。うれしい。えへへ」
そう、生まれてから3年、この天使、いや、ミオネはジンさんとハイネさんの娘で俺と兄妹のように育てられた幼馴染。
ジンさんと同じ茶色い髪の毛とハイネさんと同じエメラルドグリーンの瞳の女の子。天使の如く可愛い。
ぶっちゃけ、この村は20人満たず俺の家族とミオネの家族を除けばジジババしかいない。
夫婦になることは既定路線。
「おぉう、ガキども。精が出るな」
「あぁ、こーとうしゃん!こんにちは」
「とーちゃん!まほうは、子どものころからとっくんしたほうがいいんだぞ」
「おう、ミオネ。挨拶できて偉いな。なーに言ってんだ、おめえは。ミオネを見習え」
「えへへ、ほめられちゃった」
親父は、そう言いながらミオネを撫でる。
俺は、ムッとする。
「ユウダイ、何膨れてんだよ。将来の嫁さんに気安く触るなってか」
あぁ〜そのニヤケ面マジでムカつく。
「しょーらいのよめしゃん?んーとね、んーとね、みおねはユーダイくんのおよめしゃんになるの!ちゅ♡えへへ」
顔お赤くして嬉しそうに笑うミオネ。
「へぇ〜、ミオネやるじゃねえか。今日は赤飯だな。今夜は、ジンが泣くぞ〜」
俺は、一瞬何がなんだかわからなかった。
イマクチビルニトテモヤワラカイモノガ。
「ヤバイ、ミオネ天使すぎる!いますぐ、けっこんしよう。いまからおれたちは、ふうふだ!」
「やったー♪ユーダイくんとけっこんしちゃった〜。えへへ」
「ユウダイ・・・エロガキが」
ん?親父なんか言った?何にも聞こえない!!
「まぁ〜いいや、ミオネ、母さんたちのところに行って今夜はみんなで飯食おうって伝えてきてくれるか?」
「うん!こんやはみんなごはん!」
そういうとミオネはトコトコ家に入って行った。
俺も行こうとしたが親父に捕まった。解せぬ。
「ユウダイ、話がある。つらかせや」
おいおい、どこの不良だよ?全く。
「話ってなーに?」
「子どもらしい言葉遣いやめて素で話せや」
「わかった。これでいい?親父」
「おう、まぁ〜豹変ぶりみて確信したわ。おめえ、転生者ってやつだろ?あぁん?」
マジで柄悪いな、この親父。
昔から知ってたけど。
「うん、その通り。逢魔浩大さん?いや、18代目鬼斬って言った方がいい?」
「てめえ、誰だ?なんでその呼び名を知っている?」
「19代目鬼斬だからだよ。親父」
「じゅ〜きゅうぅ〜?はぁ?」
親父が驚いた。してやったり。
「15年ぶりの親子の再会なのに〜」
「15年ぶり?親子の再会?俺はまだこっちに来て6年しか経ってねえぞ?」
「はぁ〜!?」
今度は、俺が驚く番だった。
時間軸が違うのか?それとも転生だから合わせられたのか?
「15年前に行方不明になったのに6年?意味がわからん」
「いや、こっちのセリフだ。てめえ、雄大なのか?」
「そうだよ。向こうで死んでこっちに来た。でもまた会えて嬉しかったよ?父さん」
「何だよ、それは」
俺は、親父に抱きついた。
親父は、抱き締め返してくれたけどタカが外れたように泣き出した。
「色々有ったんだ。親父が居なくなってから。だからしっかり話そう?」
「ぐすっ・・・・・・おう、ぐすっ」
それから俺たちは、ミオネがご飯を呼びに来るまでたくさんのことを話した。
向こうで親父が居なくなってからの話。こっちでの親父の話。
そして、
親父がもう永くないって話。
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