お題「遅刻」15分
「天国」と「地獄」の名前の由来をご存知だろうか。
ご存知でない? ならこの機会に教えてあげましょう。
「定刻」と「遅刻」ですよ。
■
「いっけな~~~い! 遅刻遅刻!!」
私は二宮メル!今日からピッカピカの高校一年生!なんだけど……
髪のセッティングに気合い入れ過ぎちゃって、初日から大遅刻の予感、どうしよ~~~!?
でも、こうやって走ってると、なんだか胸がざわめく。もしかして、素敵な王子様に出会っちゃうのかも……!?
「な~んて、ね!」
バァン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
出会い頭にトラックに跳ねられ、メルは死んだ。
■
「はっ!? ここは!?」
気がつくと、メルは暗い部屋で倒れていた。真紅のカーペットがやけに冷たい。
「やっと目覚めたか……」
そこにいたのは、黒いタキシードに身を包んだ、白い髪の男の子だった。小学生4年生くらいだろうか? 偉そうに椅子に腰掛けて、こちらを見下ろしている。
「ちょっと、ここはどこよ!? 私は学校に行かないといけないのに……」
すると男の子はやれやれ、といった表情をして、こう告げる。
「ここは地獄だ」
「地獄!?!?」
メルはひっくり返った。ここが地獄!? なんで私が地獄に落ちなきゃいけないの!? 犯罪なんてしてこなかったし、親孝行もそれなりに……自信ないけど……してきたつもりだし!
「地獄って、わけわかんないんですけど。私が何をしたっていうのよ!」
すると男の子は冷たい声で、端的にこう言いきった。
「遅刻だ」
「遅刻!?!??!??!?!??!」
すると、メルの脳裏には生前の記憶の数々が走馬灯のように蘇った。チャイムが鳴ってから入る教室、9月に入ってから着手した夏休みの宿題、電車を逃して友達に送る謝罪のメッセージ……
思い返せば、メルの遅刻癖はひどいものだった。でも、遅刻しただけで地獄に落ちるなんて、聞いてない!
「遅刻は重罪だ。なんてったって人間は、運命に従って動いてるんだから」
「運命?」
突然ロマンのある響きが出てきて、メルはうっとりしかけた。
「人間には行動すべきタイミング、定刻が決まってる。そのとおりに行動すれば、運命が導いてくれて最後は天国に行ける。一方でズルズルと遅刻ばっかしてるやつは、そのタイミングを逃し続け最後は地獄に落ちるんだよ」
そんな大事なこと、生きてる間誰も教えてくれなかったじゃない!メルは内心抗議した。
「まあ、たしかにいきなりこれじゃあ理不尽かもな」
「心の声が読めるなら、先に言ってよ!」
「お前に一回だけチャンスをやる」
「チャンス……?」
「時間に全く遅れず、ぴったりで小説を一本書ききったら、お前を生き返らせてやる」
「ホントに!?」
でも小説なんて、生まれてこの方書いたこと無い。
「制限時間は15分。どうする。やるか、やらないか」
「や、やってやろうじゃないの!」
このまま地獄で暮らすなんてごめん。私には王子様が待ってるんだから。運命は、私が繋いでみせる……!
「小説なら何でもいいんでしょ!?」
「ああ、何でもいい。でもしっかりオチくらいつくれよ」
「任せなさい」
そこでメルはひらめいた。今から題材を考えては間に合わない。なら今起きているこの突飛な状況を小説にす
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