お題「遅刻」15分

「天国」と「地獄」の名前の由来をご存知だろうか。

ご存知でない? ならこの機会に教えてあげましょう。


「定刻」と「遅刻」ですよ。



「いっけな~~~い! 遅刻遅刻!!」

私は二宮メル!今日からピッカピカの高校一年生!なんだけど……

髪のセッティングに気合い入れ過ぎちゃって、初日から大遅刻の予感、どうしよ~~~!?


でも、こうやって走ってると、なんだか胸がざわめく。もしかして、素敵な王子様に出会っちゃうのかも……!?


「な~んて、ね!」


バァン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


出会い頭にトラックに跳ねられ、メルは死んだ。



「はっ!? ここは!?」

気がつくと、メルは暗い部屋で倒れていた。真紅のカーペットがやけに冷たい。


「やっと目覚めたか……」


そこにいたのは、黒いタキシードに身を包んだ、白い髪の男の子だった。小学生4年生くらいだろうか? 偉そうに椅子に腰掛けて、こちらを見下ろしている。


「ちょっと、ここはどこよ!? 私は学校に行かないといけないのに……」


すると男の子はやれやれ、といった表情をして、こう告げる。


「ここは地獄だ」

「地獄!?!?」


メルはひっくり返った。ここが地獄!? なんで私が地獄に落ちなきゃいけないの!? 犯罪なんてしてこなかったし、親孝行もそれなりに……自信ないけど……してきたつもりだし!


「地獄って、わけわかんないんですけど。私が何をしたっていうのよ!」


すると男の子は冷たい声で、端的にこう言いきった。

「遅刻だ」

「遅刻!?!??!??!?!??!」


すると、メルの脳裏には生前の記憶の数々が走馬灯のように蘇った。チャイムが鳴ってから入る教室、9月に入ってから着手した夏休みの宿題、電車を逃して友達に送る謝罪のメッセージ……


思い返せば、メルの遅刻癖はひどいものだった。でも、遅刻しただけで地獄に落ちるなんて、聞いてない!


「遅刻は重罪だ。なんてったって人間は、運命に従って動いてるんだから」

「運命?」


突然ロマンのある響きが出てきて、メルはうっとりしかけた。


「人間には行動すべきタイミング、定刻が決まってる。そのとおりに行動すれば、運命が導いてくれて最後は天国に行ける。一方でズルズルと遅刻ばっかしてるやつは、そのタイミングを逃し続け最後は地獄に落ちるんだよ」


そんな大事なこと、生きてる間誰も教えてくれなかったじゃない!メルは内心抗議した。


「まあ、たしかにいきなりこれじゃあ理不尽かもな」

「心の声が読めるなら、先に言ってよ!」

「お前に一回だけチャンスをやる」

「チャンス……?」

「時間に全く遅れず、ぴったりで小説を一本書ききったら、お前を生き返らせてやる」

「ホントに!?」


でも小説なんて、生まれてこの方書いたこと無い。


「制限時間は15分。どうする。やるか、やらないか」

「や、やってやろうじゃないの!」


このまま地獄で暮らすなんてごめん。私には王子様が待ってるんだから。運命は、私が繋いでみせる……!


「小説なら何でもいいんでしょ!?」

「ああ、何でもいい。でもしっかりオチくらいつくれよ」

「任せなさい」


そこでメルはひらめいた。今から題材を考えては間に合わない。なら今起きているこの突飛な状況を小説にす

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