示す先 3

 「はい、これで貸し出しの手続きは完了です。初めての図書館の本、貴方達の心に残る本になると良いわね。」

 「ありがとうございます。楽しみです。」


 「それにしても、ナグさんの持って来た本、随分と古い本ね。かなり奥に仕舞われていたでしょうに、それを手に取るなんて、余程惹かれるものがあったのかしら。

良かったら読み終えた後、どんな内容だったか、教えて欲しいわ。」

 本についた埃を軽く払っては図書館員は興味深そうに本を眺めてから、ナグに手渡した。


 「何だか、読んで欲しいって呼ばれている気がして。どうしてでしょう。」

 「あら、それはきっと大柱の魔法のお陰ね。たまにいるのよ、本の方から呼ばれたって子。最近はあまりいなかったんだけど・・・ナグさんを待っていたからなのね。」


 「すごいね、ずっとナグちゃんが感じてた、王宮と大柱の下に行かなきゃって感覚は、このことなのかも知れないね!」

 「ナグちゃんに読んで欲しくて、か。うふふ、すごく素敵ね。私もそんな本に会って見たいわ。」

 アンナとイリスタも、それぞれ選んだ本を抱きしめていた。


 「・・・大柱の、魔法・・・この本を選んだから、あの光景が見えた、のかな。」

 ナグは再び大柱に目を向ける。

閉館へ向けて次第に周りの照明を消されていく中、依然として淡く光を放っているそれは、静かに眠りについたように、返事を返すことはなかった。


 「それにしても、大柱のおまじない、不思議な感覚だったね。何だか頭のモヤモヤが晴れたみたい。」

 「私には、具体的に何が見えた、という訳ではなかったけど・・・「今持っている本は、私にとって良い糧になる」って言って、背中を押して貰えたような気がしているの。」

 「アンナも?私も同じ!私の場合は、それに加えて「食べ過ぎに気をつけて」とも言われた気がするけど・・・。」

 「うふふ。それもそうでしょうね。きっと大柱は、イリスタが昔、村のお祭りでそうなったのもお見通しだったんじゃない?」

 「やだ、急に恥ずかしくなってきちゃった。」

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