示す先 2
再び目の前が黒い砂嵐に包まれたかと思うと、その低い声が続けた。
「ヒトの子よ、我らの声に呼応した者よ。汝が見つけたものの先に、願わくば・・・。」
そこまで聞こえて、ぱっと目の前が明るくなり、元の大柱の前に立っていた。
「今のは・・・。」
ナグは、夢でも見ていたのかと、目を擦る。
「どうだったかい。はっきりとは見えないまでも、まるで絡まった糸が解れたような、何だか頭がスッキリとしたような感覚だろう? 」
図書館員は、得意げな顔で三人に問いかける。
「色々考えすぎて、熱くなった頭を冷ましてくれる。それが一番のおまじないの効果なのさ。一度気分転換出来れば、それだけで良い考えは浮かぶこともある。何でも知っている大柱だからこそ、複雑に絡み合った考えでも整頓出来るんだろうね。」
アンナもイリスタも、図書館員のその言葉に同意するかのように、スッキリとした顔で頷きを返していた。
確かに、頭の熱は冷めたようだが、それよりも、明らかに効果とは違った、不思議な光景を、二人も見たのか確かめようとナグは口を開きかけた。
その瞬間、チリン、チリンと鈴の音が図書館内に響き渡る。
「まもなく閉館の時刻です。本日の調べ忘れはございませんか。貸し出しの手続きはお早めに・・・。」
手に持った小さな鈴を揺らしながら、図書館員が館内を巡回し始めていた。
「おっと。もうそんな時間か。もう少し時間があれば、大柱についてもお話出来たけれど・・・とにかく、おまじないを試してくれてありがとう。またいつでもおいで。」
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