ありふれるもの 3
大柱に触れている一人当たりの時間はほんの少しだが、賑わいが落ち着くまでは、かなり時間がかかりそうだった。
大柱の周りを一回りした三人は、顔を見合わせた。
「すごい行列ね。もう少し後からにした方が良かったかしら。」
「ここまでとは予想してなかったなぁ。どうしよう・・・。」
「そうだ!列が落ち着くまで、館内の本を見て回ろう!こんなにたくさん、どんな本が並んでいるのか、開いて見てみたいな!」
「いいわね。実は私も、絵画の技法書を見かけて、開いてみたいと思ったところ。」
「私も、文章の書き方の本を開いてみたいな・・・。どこにあるかな。」
「私は・・・とりあえず、気になったものを色々みたい!じゃあ、後で大柱のおまじないのところで待ち合わせよう!」
「じゃあ、決まりね。」
「うん。また後で。」
イリスタは図書館入り口に近い本棚へ、アンナは館内中ほどの本棚へ、それぞれ歩いて行った。
見たい本の場所の見当がついていないナグは、辺りにいる図書館員に場所を聞こうと、口を開きかけたが、その瞬間ふと、大柱向こうの最も奥側の本棚が気になった。
どの本棚の間からも、大柱の光が淡く差し込む。
あまり奥の方へ行くと迷ってしまうかもしれない、というナグの不安を和らげるように、足元を照らしていた。
進んでいくうちに、次第に埃が被った本が増えていく。
本の顔というべき、装丁も古びていて、味気ない。
先ほどまで見ていた、学生たちに取り合われるような本とはまるで違う、手に取られることをすっかり諦めたようなその様子に、ナグは物悲しさを覚えた。
「ここの本たちは・・・どんな本なのかな。」
手に取った本の表紙には、カラカラに乾いて掠れた文字で、『我らが友へ』と短く刻まれていた。
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