夕凪までの過ごし方 3

 「今は『アカシック・レコード』を見るには、この国の、大図書館の大柱に直接触れないといけない。

例えば、遠くの小さな国や町で、この国で開発された技術を使う必要があったとして、まず来国して、それから関する目録探しから始めていては、時間も手間もかかってしまう。

アーカーシャの魔法があれば、来国する前に、あらかじめ目録から見当がつけられるようになる、という利点があるんだ。」


 「ええと・・・それがあれば、予めやりたいことを決められて、国に来てから何をして調べればいいかが、より分かるようになる・・・ということ、ですか。」


 そこまで言って、三人ははたと気づいて、声を揃えて挙げる。


 「「「プラムさんの絵本作りと一緒だ!」」」


 あまりにも三人の息が合っていたことに、オリビアは思わずビクリと体を震わせた。

そして自分と三人の、その様子が面白くてクスクスと笑う。

 「ああ、驚いた。あまりにも以心伝心なんだもの。・・・そうか、プラムさんのその件も聞いていたんだね。そう、考えは同じだ。」


 「私たち、この国のことをもっと前から詳しく知っていたら良かったのに、って思っていたところなんです。」

 「今日も色々見て回って、あれもこれも、やってみたくなっちゃって・・・。」

「それで、とりあえず最初に、図書館の大柱のおまじないを試してみようと思っていたんです。」


「なるほど。それで図書館に行こうとしていたんだ。君たちのその気持ちを聞いて、これはますますアーカーシャ完成を急がなくてはならないね。きっと同じ気持ちを抱く者は、この世界にたくさんいるだろうから。」


オリビアは、三人に向き合いながらも、自分にも言い聞かせるかのように胸に軽く手を当てては続ける。


「ありがとう。お陰でとても良い休憩時間を過ごせた。本当に君たちと話せて良かった。もうひと頑張りしてくるよ。では、また寮でね。」

「はい!応援しています!また寮でお話を聞かせてください!」


新しい風に触れ、オリビアの疲労も、三人の緊張も、すっかり潮風と共に遠く吹き散らされていた。

今まで以上に軽い足取りで、それぞれの場所へ歩み始めるのだった。

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