夕凪までの過ごし方 1

 思わぬ歴史の生き証人、妖精族のロザリーナと、彼女のその願いを目の当たりにした新入生たちは、ますます意欲を高めていた。

 この後の自由時間をどう過ごそうか、そしてこれからの学院生活の充実にあれこれ考えを巡らせている。


 「明日は一日学院はお休みです。とは言っても、各施設は開館していますから、今日まわりきれなかった場所へ訪れるのも良いでしょう。

また、城下町では週末恒例のマーケットも開かれる予定ですから、そちらもお勧めですよ。

授業の開始は明後日からとなります。詳しい予定表は、それぞれの寮へ送っておきますから、今晩帰ってから各自確認しておいてくださいね。

・・・では、本日は解散です。皆様、お疲れ様でした。」


 その言葉を聞くや否や、はやる気持ちを抑えきれずに、ゼライツと案内人たちに急いで礼を述べては、新入生たちは思い思いの場所へ、足早に駆けていくのだった。


 イリスタは、早速ポケットに一杯詰まったパンフレットを取り出しては、それぞれの場所を思い返していた。


 「むむむ・・・明日は城下町でマーケット・・・どうしよう、でもこの施設の、あれもこれも見たいし・・・。」

 アンナはイリスタの考える明日の過ごし方に、思わず口を出した。

 「一日でその動きは、イリスタが四、五人いなきゃ出来ないわよ。焦らなくても、学院は逃げないわ。」


 「とりあえず、今日は図書館の大柱のおまじない、試しに行こう。これからの学院生活についてだけじゃなくて、明日の過ごし方についても、良い案が浮かぶかもしれないものね。」

 「・・・それもそうだね。ここで悩んでても仕方ないか!」

 三人は、手にしたパンフレットを再びポケットに押し込み、図書館へ足を向けた。


 「君たちは、図書館に行くのか。うん、良い選択だ。」

 後ろから、昨晩遅く、月光の中で聞いた落ち着いた声に、ナグは振り向いた。

 「あっ!オリビア先輩!こんにちは。」

 その声に、イリスタとアンナも足を止めた。

 「こ、こんにちはっ。初めまして、ご挨拶が遅れまして・・・。」

 

 しどろもどろの二人に、オリビアは優しく微笑む。

 「こちらこそ、挨拶が遅くなってすまないね。オリビアだ。よろしく。」

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