終幕に光る 2
「わぁうぁぁん!ヘルガもロザリーナも、ふたりはずっと一緒に居て欲しかったのに・・・あんな悲しい結末になるなんてぇ!」
「ぐすっ、ぐすっ・・・ヘルガの思いは今も続いているのは、救いかもしれないけど、それでも・・・ふぇぇん。」
「うぇぇ・・・ん。ひっく。うぁ・・・うぇぇん。」
イリスタとアンナは、顔をくしゃくしゃにしながらも、何とか感想を声を出せていたが、ナグは全く声が出せない程に泣きじゃくっていた。
他の新入生たちも、泣き腫らした目を擦りながら、ロビーに集まっていた。
「皆、この劇に思いを馳せてくれるのは、大変有り難く結構なことだ。ベルたちも喜ぶだろう。
・・・しかし、この組は特に感動屋さんが多いな。皆、手洗い場で顔を洗っておいで。噴水広場には、少しゆっくり戻るとしような。」
そういう案内人も、頬には涙の跡が残っており、手元の書類も、落ちた涙で少しふやけていた。
冷たい水で、泣き腫らして火照った顔を冷まし、手洗い場の横に併設された水飲み場で、カラカラに乾いた喉を潤した。
声も出なかったナグも、やっと一息ついた様子だ。
「ふぅ、たくさん泣いちゃった。悲しかったけど、とても素晴らしいお話だったね。私も・・・こんなに沢山の人の心を動かせるお話を作りたいな。」
「うん。すっかり虜になっちゃってた。私たちの前に、先に見終わった皆があんなに絶賛してたのも分かるね。
私はやっぱり、特にベル先輩に感動したなぁ。観ているうちに、すっかり本物の龍だと思い込んじゃった。」
「ロザリーナ役の先輩も凄かったね。ヘルガと直接言葉を交わしていないのに、お互いを思い合う表現が出来るなんて。」
「まだあの世界の空気で、足元がふわふわしてるよ。今日の残り時間いっぱい、このままになりそう。」
三人は改めて、感想を交わし合う。
心に響いた場面について語っているうちに、熱が入り、先ほど冷ましたばかりの顔が、再び紅潮する。
その度に、冷たく湿らせた手拭いをパタパタと頬に当て続けるのだった。
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