公演「龍に恋した妖精」 2
龍種とヒト種によって、我が子のように愛しまれ育まれた自然と魔力は、いつしか意志を持ちはじめ、妖精と呼ばれる存在に昇華していった。
魔力の化身とも言うべき妖精たちは、龍やヒトの目に直接見ることは叶わないが、魔力との親和性が高い者を媒介にして、心を交わすことが出来た。
「創世神の分け身である魔力の化身が、この地に生きる我々に力を貸してくれている。創世神に全てを捧げる巫女として、こんなに光栄な事はない。これからも襲い来る試練に耐え続け、我らは、命をかけて其方たちを永遠に守ると誓おう。」
ズメイ族長ヘルガがそう宣言すると、周りを踊るように舞う妖精たちは、輝く衣装を閃かせて嬉しそうに応える。
そんな多くの妖精たちの中で、一際大きく輝いているのは、「ロザリーナ」と呼ばれる個体だった。
最も強い力を持って生まれた彼女は、ヘルガに特に惹かれていく。
ヘルガも、そんなロザリーナの存在に心地よさを感じていた。
直接言葉を交わし、姿を見合うことは無くても、お互いに、ただ隣にいるだけで幸せだった。
そして訪れた、あの災厄の日々。
この地の恵みを求めて、多くの敵が攻撃してきた。その標的のほとんどは、力の弱いヒト種や、魔力だった。
当然、魔力の化身である妖精たちにも、多くの犠牲が出てしまった。
それは「ただ試練に耐えるのみ」という教義が龍種ズメイ族を縛ったが故のことだった。
ヘルガはそんな状況に、大粒の涙を流す。
「教義に従い、其方たちを永遠に守ると誓ったのに、我らは何て無力なのだ。ロザリーナ、約束を守れない私をどうか許してくれ。」
ロザリーナは、その言葉の意味に気づき、はっと息を呑む。
「ヒトや妖精たちが耐えられない試練は、我々が受けよう。愛しきヒトと妖精よ、我らの亡骸の後に、恵みあらんことを。」
ヘルガは、その身に全ての攻撃を受け続け、やがて敵が全て去るまで、立ち続けた。
そして災厄が終わり、残ったヒト種と妖精たちが見たのは、それがかつてヘルガだったとは信じがたい姿だった。
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