王立劇場 2
劇場ロビーには、その日に上演される演目名と、出演者たちの肖像画がずらりと並んでいた。
ベルたちの舞台化粧と同じく、絵の顔にもキラキラと輝く粒子がついている。
落ち着いた臙脂色のカーペットが敷かれた空間にあっても、僅かな光に反射し、立体的に見えるようだった。
「新入生歓迎公演 『龍に恋した妖精』」
「再生戦争の時代の、悲しくも美しい物語。一族の使命を果たすべきか、愛する人を守るべきか。ふたりが至った結末は・・・。」
「主演 ベル・ドナ・フォン・フリーレン。龍種ズメイ族長・ヘルガ役。」
一際大きく、肖像画の一枚目として置かれているのは、先ほどの挨拶をしていた、演劇部長のベルの絵だった。
「フリーレン・・・って、武官のレーゲ様の?」
新入生たちは彼女の肖像画を眩しそうに見上げている。
案内人が説明を続けた。
「フリーレン家の方々は、人前に立ったりする事を得意とされる方が多いのさ。レーゲ様のモデル業や、ベルの舞台俳優業だったりね。最も、ベルはまだ学生の身分だけれど。」
「僕がこうして演劇をやろうと思ったのは、フリーレン本家のレーゲ様の影響が大きいかな。
あのお方は「静謐自若」の二つ名の通り、いつ如何なる状況でも、自分を見失わず、スポットライトを一身に浴びて、民の中心に立ち続ける心の強さをお持ちだ。僕もそんな風になりたいと思ってさ!
そして、まだ学生身分の僕だけど、いつかはグラブダ王国を代表する役者になってみせると誓っているのさ!」
ベルの瞳には憧憬と、同時にレーゲすらも超えて見せよう、というささやかな野望が浮かんでいた。
「おっと。そろそろ上演時間だね。では、僕ら出演者は準備に入るよ。是非、楽しんでいってくれたまえ!」
華やかな役者たちは、舞台の袖へと移動を始め、静けさを取り戻した劇場ロビーは、上演される劇への期待を大いに含んだ空気に包まれていた。
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