結果の収拾 2

 オリビアは、その様子を広場中心から少し離れたベンチに座りながら、遠巻きに見つめていた。


 「模擬試合・・・今回は噴水は壊れなかったんだな。復旧するまで数日かかっていたし、武官たちは学院補佐に叱られたんだっけ。しかし前回の彼らのあの戦い方は、戦闘は専門外の私にとっても、なかなか興味深いものだったな。今年の結果については、学内新聞を待つことにするか。」


 丁寧ながらも、素早く慣れた様子で復旧作業を進める警備隊員たち。

的確な指示を出すその警備隊長である四人の武官、その場の全てを俯瞰し、最も効率の良い方法で管理運用している学院補佐。


 一つ一つの歯車が頑丈なのはもちろん、円滑に物事が進むような組織づくりをしているグラブダ王国の、そんな形を学ぶのも、オリビアの留学した理由の一つだった。


 「ヒト種の最大の発明、『国という概念』、か。確かに龍や天翼、魔には無い考え方だな。しかし、今時分では彼らも既に知っているその概念を、ルディミアに持ち帰っても、理解してもらえるものでは無いだろうな。」


 オリビアは、そう考えながら、遠く響く復旧作業の音と、風が揺らす木の葉の音を聞きながら、しばし目を瞑り、静かに陽の光を浴びていた。


 「ジギーさん、この辺りの被害は無いようですね。」

 「良かった。どうも私は魔法の細かい調整は苦手でね。魔力の反転なんて使ってみたものの、狙ったところでは無い場所まで影響していたらどうしようかと思っていたから。」


 「現状、急いだ復旧の必要がある範囲はここまでですね。後の部分は経年劣化によるものでしょう。これに関しては後日、然るべき機関で再調査、検討するよう回しておきます。」

 「うん。頼んだよ。さて、では次は西側の・・・。」

 そう言いかけて、ジグムントは、ベンチに座ってぼんやりしているオリビアに気がついた。


 「む?オリビアくんだ。珍しいな。本宅寮の学生だ。試合を見に来てくれていたのかな。」

 「ああ、最上級生の。何やら彼女は疲れているようですし、お話されるなら手短に、ですよ。私たちは先に次の場所に行っていますね。」

 「そうだな、しばらく彼女の顔を見られていなかったからな。少し行ってくるよ。続きは頼んだ。」

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