結果の収拾 1

 噴水広場では、ゼライツを中心として、今朝の模擬試合の後片付けが進められていた。


 ルヴェンの炎によって焼け焦げ、酷く傷んだ上に、ジグムントの踏み込みによって割れた石畳は取り替えられ、レーゲとエルマによって吹き散らされた水と落ち葉は、掃き集められていた。

 

 「今回は新入生たちが戻って来るまでには間に合いそうですね。警備隊の皆、毎回後片付けまで手伝ってくださってありがとうございます。」

 破損と復旧箇所の一覧を手にしながら、ゼライツは側の警備隊員に声をかける。


 「ゼライツ様、勿体ないお言葉です。警備するにあたって一番大切なのは、災いを未然に防ぐことなのですから、これも仕事のうちですよ。学生たちが怪我でもしたら大変ですし。」

 「その心遣いが有り難いです。しかし、隊長四人は何をしているのでしょうか。着替えたらすぐに作業に参加すると言っていたのに。」


 「もう!レーゲ!勝負は決まったでしょう。今回は私の勝ちなんだから、諦めて。」

 「だって今回のも最高傑作なのよ!世に出さないなんて、服飾業界の損失よ!模擬試合は負けたけど・・・新たに勝負を申し込むわ!方法は・・・。」

 「気持ちは分かるが、一旦落ち着け、レーゲ。今日はエルマもお前も疲れているんだ。万全の状態で勝負した方が良いだろう。日を改めて・・・。」

 「待て待て、ジギー。ここの問題は勝負の機会の話じゃないだろ。レーゲもエルマの気持ちをだな・・・。」

 「じゃあせめて!せめてこのアクセサリーだけでも!これはエルマの好きなものをモチーフにしてて・・・。」


 警備隊の詰所から着替えて戻ってくる四人は、模擬試合で見せたような、背筋の伸びた姿ではなく、昔馴染み同士、気が置けないままの様子だった。


 「なかなか戻ってこないと思ったら、何を言い合っているのですか。部下たちは既に作業を始めているんですから、そういうのは後にして下さい。特に貴方達は広場を散らかした当事者なんですから・・・。」


 ゼライツにピシャリと言われて、静かになった四人は、バツが悪そうな顔をして、しぶしぶ各々の作業に加わる。

 四人の騎士の、時折見せる素の人柄に、警備隊員も学生も、親近感を抱くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る