照らされた疲労 1

 オリビアは薄暗い作業室の小さい窓の外、博物館を後にする新入生たちをぼんやりと見つめていた。

 その手に握られている展示図面は、繰り返し書き足した跡で、ひどくくたびれている。


部屋の扉が軽くノックされ、力なく立ち上がり扉を開けると、老年の教諭が様子を伺い立っていた。


「オリビアくん。作業は順調かね。」

「はい。あとはこの解説板の位置を決めるだけです。」

「ふむ。展示全体の流れとして、この位置も良いが、この展示品に付随させる案も捨てがたい。こちらの案は後輩たちのアドバイスによるものか。ふむふむ。」

「私一人の単独展示、任せていただけているのは非常に光栄ですが、その分一人では煮詰まりますね。学友の手助けあってこそです。」


 オリビアは、机に無造作に散らばった展示図面案をかき集めては、険しい顔で見比べる。

 小さい窓から差し込む、細かくチラチラとした外の光に照らされた紙は、オリビアの疲労した顔を白く映し出す。


 「展示が来週に迫っているとはいえ、根を詰め過ぎなのではないかね。展示全体のレイアウト指示書は完成しているのだし、少し外に出て気分転換してきてはいかがかな。」

 老年の教諭は、部屋の中をぐるりと見渡しては、オリビアに提案をする。


 そう言われてオリビアは、山積みになった図面案からやっと目を離す。

「・・・そうですね。流石に薄暗い部屋で考え続けるのは疲れました。」


 「うむ、それが良いよ。行っておいで。声が聞こえていたかも知れないが、新入生たちもさっきまで博物館を見学していたんだよ。今日は他の東側施設も巡るそうだから、その様子でも眺めてきてはどうだろう。初めて君が国に来た日の気持ちを思い出すかも知れないね。」

 「あの日から、随分と遠くまで来たなと思います。そういえば、新入生の三人が同寮に来たんです。」

 「ほう、ならば尚更、新入生たちに会っておいで。君にも彼らにも良い刺激になるだろう。」


 群青色のマントを羽織っては、オリビアは明るい外へ繰り出した。

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