後に見る姿

常設展示を一通り見終え、中央ロビーへ戻ってきた新入生たちは、再び龍種ズメイ族の巨大な模型を見上げながら、口々に感想を述べ合う。

 この国の成り立ちから、再生戦争を経て、現在に至るまでを知ってから、改めて見る龍種ズメイ族の姿は、荘厳さは残しながらも、今は見ることは叶わないという事実を前にして、少しばかり寂しそうにも映るのだった。


 「さて、一旦皆集まったね。軽く一巡しただけでも、見応えがあっただろう?気になる展示はあったかな。詳しくは、展示担当の学芸員や学生たちが解説してくれるよ。君たちも気づいていたと思うけど、彼らも話したがり屋でね。今日は涙を呑んで我慢してくれたんだ。良かったら、また後日訪れて、話を聞いてあげてやってくれ。」


 様子を影からひっそりと伺い続ける彼らをチラリと見やっては、案内人は彼らの願いを代弁する。


 「学内施設案内は、まだ始まったばかり。さあ、次の場所へ出発しよう。」

 案内人に連れられ、新入生たちは名残惜しそうに後ろ髪を引かれながらも、次の場所へと移動を始めた。


 特にイリスタは、この一施設で、すでに大量になったパンフレットをまとめてポケットに詰めているので、人一倍カサカサと紙の音を立てながら歩いている。


 「今日一日で、イリスタ自体がパンフレットで埋もれちゃうんじゃないかしら。」

 イリスタのポケットに入りきらなかった、いくつかのパンフレットを持ってピラピラと音を立てるアンナは、少し戯けてクスクスと笑う。


 「イリスタは何でも集めちゃうのよ。いつもこうなの。うふふ、昨日部屋での荷物の量からも分かるでしょ。でもその中に思いがけず、とても面白い物も入ってたりするの。前にあったのはね・・・。」

 ナグに耳打ちするように言いかけたアンナを、イリスタは顔を赤くしては大急ぎで止めようとする。


 「え!ちょっと!やだやだ、アンナ!ひょっとして・・・あれは恥ずかしいよぉ!」

 「うふふ、いいじゃない。あれはナグちゃんにも教えたいわ。」

 「何なに?とても気になるなぁ。教えて欲しいな。」

 「ナグちゃんまでー!もうー!」

賑やかに笑い合いながら、博物館を後にする三人。


そんな彼女たちを、博物館内の作業室の窓から、見つめる影が一つあるのだった。

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