歴史民俗学から見た国 2

 室内を順路に沿って進むに従って、現代で使われている民具や祭具が並び始める。ナグの言う、「秋の大祭」についても説明されていた。


 「毎年秋の満月の日を中心に、その前後日を合わせた三日間を祭日として開催される、秋の大祭。その始まりは、再生戦争の最終末期、このグラブダの地の統治者をズメイ族から現在の王家へと引き継いだ儀式である。」

 「平和な世における新たな統治者と、グラブダ王国の誕生を内外に広く知らせたその儀式と祝祭は、かつて敵対していた全ての他種族も招かれた。」

 「儀式と祝祭が「秋の大祭」として、国民の祭日となった今日においても、その起源と意義を継承することを望む。」


 具体的にどのような儀式を行うかを知るのは、王家とそれに近しい者のみに許されたことであると説明されていた。

 「これは王家が王家たる為の、神秘性に関わることで、侵すことがあってはならないのさ。学術的にどこまで入っていけるか、というのも実に難しいところでね。図書館の大柱には儀式については、一応記録されているとは言え、その閲覧の権限は一般国民には無いからね。・・・僕自身、学者として知りたいのが、正直なところさ。」

案内人はそこまで話しては、そっと指を口元に当てて、「ここだけの話にしてくれよ。ゼライツ様に叱られてしまう。」と、悪戯っぽく言うのだった。


続いて、図書館の大柱についての解説が並んでいた。

図書館の構造を描いた平面図の中心には、大柱の小さな模型が立っていた。


 「ズメイ族の持つ、過去の膨大な記録と、戦中にヒト種によって生まれた新たな知識は、全て王立図書館に収蔵された。また、その散逸を防ぐために、図書館の中心の大柱に『目録作りの魔法』がかけられた。」

 「この魔法は、ズメイ族が使用していた『記録の魔法』を応用したものであり、彼らの多大な協力あって、初めて成し得たものである。」

「大柱の素材は、秀峰ストラル山から切り出された花崗岩を主成分とし・・・。」


そして展示室の最後には、「「秋の大祭」の見どころ!」と題された、明るく色とりどりの手作りらしい飾りがついた説明板が光っていた。

屋台や催し物の詳細が妙に力の入った様子で記されていることから、如何に楽しみにされているかを知るのに充分すぎた。特にイリスタは食い入るように見つめているのだった。

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