歴史民俗学から見た国 1
次の展示室は、歴史・民俗史についてだった。ズメイ族が使用していた祭具と、その当時の民具が所狭しと並んでいた。
手入れは行き届いているものの、総じて古びた見た目から、それらが使われていたのが遠い昔であることは明白で、薄い光に照らされた展示品は、その役目を終えたように、静かに見学者の前に座っていた。
「皆は『創世神話』というものを知っているかい?いつ、誰がどこで語り始めたのかは未だに解明されていない、一種の唄のようなものなんだけれど、ズメイ族はそれに出てくる創世神に仕える巫女の役割を持っていたんだ。その祭具は儀式を行う際に使われていたものだよ。
龍の姿のまま使うには小さすぎるから、恐らくは同素体という分身たちが使っていたんじゃないかって言われているんだ。これもまだ研究中なんだけどね。」
案内人が指す祭具の側に添えられた説明板には、創世神話の全文と、壁画の写しが記されていた。
初め、世界は混沌の海の中に在り。
天より炎の矢降り注ぎて、原初の神生まれたり。
神はその身より溢れる魔力を使い、
まず自らの姿に似た者の住まう地を、
次に自らの心に似た者の住まう地を、
そして自らの力に似た者の住まう地を作りたり。
それぞれの地にて命満ち足りし刻、
原初の神は光輪の彼方へ消え去りぬ。
「創世神話…おとぎ話だよね。草も木も、魔法があるのも、全部その神様が作ってくれたからで、今も皆が平和に暮らせるように見守ってくれているんだってお話。」
「うん。絵本で何度も読んだね。毎年あってたお祭りも、その神様に感謝するものだったっけ…大人たちがお社で何かやってたような…。うーん、それよりもお祭りの屋台で買った飴を食べてた覚えしかないよぉ。」
「うふふ、イリスタは屋台の食べ物を端から端まで食べるんだ!って毎年意気込んでたわね。結局半分くらいでお腹いっぱいになっちゃってたけど。」
「アンナちゃんとイリスタちゃんのところもお祭りがあったんだね。この国にも、神様に感謝するお祭りが秋頃にあるんだよ。もちろん屋台もたくさん出て、とても楽しいよ。」
「え!本当に!?どうしよう!大きな国のお祭りの食べ物、全部食べられるかな!」
イリスタの本気で悩んでいる声に、アンナとナグは思わず吹き出すのだった。
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