生物学から見た国 2
「やはり予想通り、博物館は時間泥棒だな。そのための時間は確保しているから、全く構わないけれど。今は分からないことを持ち帰って、これからの学院生活に役立ててくれるのならば、冥利に尽きるというものだな。」
案内人はそんな新入生たちの姿を、少し離れた場所から見つめていた。
彼の後方には、展示を担当した学芸員や、手伝った学生たちが何やら、うずうずとした様子で控えていた。
「しかし、補足説明をお願い出来る程の時間は取ってないから・・・。そんなに恨めしそうな目で見ないでくれよ。君達が熱心なのは良い事だけど、今日はまだ他にも行く所があるんだ。文句ならゼライツ様に言ってくれ。」
案内人はそんな彼らを窘めるように言う。
「新入生が入学して案内される度に要望を出し続けては、無理言ってやっと今くらいの時間を確保して頂けたんだから、これ以上は流石に・・・とは思うけれど、やっぱりまだ時間が足りないよ。」
「ああ!素通りしないで!そこはもっとじっくり見て欲しい部分なんだ!」
「そこは説明文だけじゃ表現しきれなかった箇所なんだよぉ。」
ひそひそとした声ではあるが、そこに込められた熱意は、新入生たちにも感じられた。その空気がくすぐったくて、展示を眺める顔を、思わず緩ませてしまうのだった。
「この分類で見る限り、学院はヒト種が大半なのかな。」
「うーん。他の種族を見かけたのは、船着場でくらいだね。ナグちゃんは他の種族は会ったことある?」
アンナとイリスタに問われたナグは、空を見ては自身の記憶を辿る。
「ええと・・・。直接は無いけど、遠目にはあるかな。街中でお買い物をしている姿なら。魔種の旅人さんは、魔法道具のお店では、詳しくお喋りしていたし、天翼種の旅人さんは、大きな白い羽が眩しかったのは覚えているよ。色んな人が立ち寄ることも多い、大きな国だし・・・。」
そこまで言っては、ナグは少し考え込んだ。
「でも、龍種の旅人さんは見たことないかも。数が少ないとは言っても、一度くらいはこの国に来てそうなんだけどな。」
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