生物学から見た国 1

 「次の展示は、各種族の特徴について。生物学や医学分野が主だね。大別して四種族が知られているけど、それぞれの違いについて詳しく解説しているんだ。」

 自然史の展示とはまた違う雰囲気を備えた展示室内には、多くの模型が置かれていた。


一、 ヒト種。四種族の中で、最も多く繁栄している。二足歩行を行う。体躯や外見等は個人差が大きい。集団行動することが多い。体はそれほど頑丈では無い代わりに、手先が器用で、様々な道具を作り出す能力を持つ。


二、 龍種。体長は四種族の中で最も大きく、長命。頑丈な鱗を持つ。頭頂部には角があり、背中にかけてたてがみが生じる。背中や腕には被膜状の翼があることが多い。特筆するものとして、異種族に姿を似せた「同素体」という分身を作り出す能力を持つ。


三、 天翼種。姿形はヒト種に近いが、背中から腰にかけて羽毛状、または光輪状の翼が生じる。血族を中心としたコミュニティを作るため、異種族との交流は四種族の中では最も機会が少ない。


四、 魔種。体内に魔力貯蔵器官を持つため、四種族の中で最も魔法の扱いに長けている。その中でも特に長けた者は、「魔王」と呼ばれることがある。種族の姿形は様々であり、一概に定義は出来ない。


 「これら四種族は、互いに言語による意思疎通が可能である。それ以外の生物は、動物と魔物に分類され・・・。」

 その後も、各種族や分類について細かい説明板と展示品がずらりと並んでいた。


 「みてみて、これ龍の足形だって。すごく大きいね!」

 イリスタは、床に描かれている種族毎の足跡の絵と自分の足の大きさを比べていた。


 「魔種の生え変わった角だって。わぁ、重い!」

 「こっちの天翼種の羽はものすごく軽いよ。」

 「ヒト種の大発明品、「国」という概念・・・。どういうことだろう?」

 「魔物が危険生物とされる理由・・・。へぇ、どれどれ。」


 新入生たちは、各々興味を惹かれる説明板の前で立ち止まっては見入っていた。

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