自然史から見た国 2

 展示室の壁に沿って、岩石のサンプルが並ぶ。それぞれの上には、特徴などが分かりやすく図解で示している。

手作りであろうそれらの説明板の作成者として、学院に所属する学生たちの名前が記されていた。


 「展示に関わる研究室に所属する学生たちも、このように展示のお手伝いをすることが多いんだ。もちろん相応の手当ても出るし、何より自分たちの発表の実践練習となる。最上級生になると、単独で展示を任されることもあるんだ。」

 案内人は、物珍しそうに展示品を見つめる新入生たちに、説明を加えた。


 順路を進むと、地域の気候についての展示がされていた。

 「春から夏にかけては雨は少ない。穏やかな晴れの日が多い。秋に入る頃、海からの大風が吹くと共に次第に雨量が増え、冬はストラル山に阻まれた雲から大雪となる。」

 「平均すると温暖であるが、季節によって寒暖差が大きいことが特徴。そのことを利用した果樹栽培が盛んである。」


 こちらは細かく分析されたグラフや統計表がびっしりと並んでいる。一朝一夕ではなく、これらの研究が如何に長い年月もの間、行われているかが一目で分かるようだった。


 「生まれてからずっと、この国の春と夏は暖かくて、秋と冬は寒いもので、それがどうしてなのか何て考えなかったな。こうやって文字や数に示せるような、ちゃんとした理由があって暖かくて寒かったんだなぁ。」

 ナグは、貼り出されている統計表を指でなぞりながら、過去の天気を思い出していた。


 「私たちの国は、夏には雨がとても多かったね。冬に雪は・・・降ったことないかも。」

 「うん。雪は実際に見たことはないね。前に、北方の国の人たちが交易で来た時、お土産に雪の入った置物を貰って・・・スノードームって言ったかな。それで、一度は雪を見てみたいなって思ってた。」

 「そっかぁ、この国は雪、降るんだ。また楽しみが増えちゃった!雪での遊び方、教えてね!」

 イリスタはくすくすと笑いながら、ナグの手を取った。


 昨夜の暗ささえも、三人でいると明るく見えたのだから、今年の雪は、どれほど白く輝くのだろうか。ナグは、そんな期待を胸にして、照れくさそうに頷いた。

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