自然史から見た国 1

 「あれ、来週の展示・・・オリビアさんの名前があるよ。」

 「本当だ。『アーカーシャの魔法について、経過報告』。へえ、研究だけじゃなくて、展示の準備もしていたのね。それで特に忙しかったんだ。大変そうだなぁ。」

 「大柱についてのことも詳しくわかるかも知れないね。じゃあ、来週オリビアさんの展示を見に行くとして、それまでに少しでも他の展示も見ておこうか。」


 アンナとイリスタは、そこまで話して、ナグが遥か後方にいることに気がついた。

 「ナグちゃーん。どうしたの?こっちだよー!」

 「うふふ。ナグちゃん、感動屋さんね。図書館の大柱の時も、すっかり見入ってたもの。」


 二人に呼ばれたナグは、はたと我にかえると、二人の元へ駆けて来た。

 「ごめんね。なんだか見惚れちゃってて。置いていかれちゃうところだった。ありがとう。」

 照れ臭そうに笑うナグを見て、アンナとイリスタも微笑みを返した。


パンフレットに載っている他の展示について、あれこれ話しながら一つ目の展示室に足を踏み入れかけた時、ナグは人知れず、模型の龍を再び一瞥したのだった。


 「最初の展示は、このグラブダ王国がどんな地形や気候の上に立っているか、について。主に地質学や気象学が中心となる研究だ。」


 少し薄暗い展示室内に入ると、正面には、グラブダ王国の全体模型が見下ろせるように置かれていた。

鳥瞰図のように見ることができるその模型は、一つ一つの建物が細く作り込まれているのはもちろん、植物や岩石や海すらも、本物と見紛うほどに質感が似せて作られている。それぞれの地形には、地質成分や構成要素について記された小さい説明板がついていた。


 「王宮北・ストラル山、花崗岩。含有魔力量・並。」

 「市街地南・トビト地区、砂岩。含有魔力量・並〜高。」

 「湾内、泥岩または凝灰岩。含有魔力量・低〜高。(変動・偏りあり。)」


 模型をぐるりと囲うガラス板が取り付けられた土台には、いくつも小さなボタンがついていた。

 興味を抱いた見学者がそれを押すと、からくり仕掛けが作動し、模型の海に波が起こったり、植物や岩が色や形を変えながら、説明をより分かりやすいものとして現れていくのだった。

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