王立博物館 1

 「おっと。もう着いちゃったね。答えてくれて、どうもありがとう。うんうん、いい記事になりそうだ。」


 アステリオは満足そうに、書き記した自身のメモ帳をペラペラとめくりながら言った。


 「本当に。突然のインタビューだったのに、素敵な回答だったわ。さて、私たちも俄然気合を入れて記事を作らなきゃね。」

 「もちろんだとも!さあ、リロ。早速原稿を書き上げよう!」

 「ええ。腕が鳴るわ!情報は鮮度が命なの。一両日中には学内新聞として配布するわ。是非読んでみてね。」


 リロは三人に軽くウインクをする。彼女たちの楽しそうなその姿は、大好きな事を全力で取り組めている証であることに他ならなかった。


 「ここは王立自然史歴史博物館。初めてこの国に来た子はもちろん、既にこの国を知っている子にとっても、とても有用な施設さ。先に話した通り、魔法の成り立ちについてだったり、他にも色々な展示があるから、ゆっくりと見ておくれ。」

 「じゃあ、私たちはこれで失礼するわね。本当にありがとう!」

 小走りで駆けていく二人を見送り、アンナたち三人は改めて目の前の建物に目を向けた。

 


 「やれやれ。新聞部は本当に元気が良い。ああやって学内を駆け回って、時には私たち案内人すら知らない情報も仕入れてくるんだ。それが頼もしくもあり、恐ろしくもあるところだがね。」


 列の先頭を率いていた案内人は、そう言って少し困ったような顔をしては、軽く咳払いをしてから説明を続けた。


 「改めて、こちらの施設は『グラブダ王立自然史歴史博物館』。この国の成り立ちから、歩んできた歴史、それと共にある魔法や民俗学といった、歴史人文学の観点はもちろん、地理・地質や地形、気候など、自然史の観点から見たグラブダ王国について、常設で展示している。最新の研究に基づいた展示は、様々な学問分野のエキスパートがいる、この国ならでは、なのだよ。」

 

 新入生たちは、来館者を迎えるために大きく開かれたエントランスに立っては、その規模の巨大さに、感嘆の息を漏らすのだった。

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