書き記す腕章 1
「ルーグ寮の新入生ちゃんたち!おはよう!」
彼らの内から、昨夜の入寮歓迎会で見知った顔が明るく声をかけてきた。
「おはようございます。えっと・・・。」アンナとイリスタは急いで記憶を辿り、彼の名前を思い出そうとする。
「確か、アステリオ先輩、ですよね。広報や宣伝活動について研究している・・・。」ナグは、彼についてスラリと答えた。
答えられる前に自己紹介をしようと息を吸い込んでいた彼は、思わぬナグの答えに、空気を飲み込んだまま、驚いて目を丸くした。
「わお、驚いた。昨日初めて出会った僕の、その研究についても覚えているなんて。そう、改めて自己紹介だ。僕はアステリオ。研究内容はナグくんのいう通り、広報や宣伝活動について、さ!そして、学内新聞部の部長でもあるんだ!」
アステリオは誇らしげに、腕章をぐいと見せつけた。手作りなのか、少し縫い目が綻びてはいるが、凝った文字と印が刺繍されている。
「まだまだ出来たばかりの部だけどね。私たちは学内での色んな出来事を記事にしているの。まるでその場にいたような感動を、ゆくゆくはずっと未来の人たちにも伝えたいと思って始めた活動なのよ。」
アステリオの側から、ひょっこりと顔を覗かせたのは、小柄な女学生だ。
「彼女はリロ。副部長を務めてくれているんだ。」「よろしくね。」
「はい、改めてよろしくお願いします。」
「というのも、今回はこの模擬試合の事を記事にしたくてね。詳しい魔法の仕組みとか戦略については、得意な部員に任せてあるんだけど、それを見た新入生たちの感想は僕らが聞いて回っている、という訳なんだ。簡単な感想で構わないから、聞かせてもらえないかな?」
案内人たちに連れられ、最初の施設に向かう道すがら、アステリオとリロは、アンナたちにインタビューをしていた。
「ズバリ、先の模擬試合の感想は?」使い込まれたペンを構えて尋ねる。
「ええと、なんと言っていいのか。上手く表現出来ませんが・・・想像を超えていて、とにかく凄かったです。」
ナグは思いを表現する言葉を必死に探したが、それ以上の言葉が出てこなかった。
考え込むナグの緋色の瞳を覗き込むリロは、同調しては頷く。
「うんうん、分かる。なんたって、一国を代表する武官様達だもの。その上、毎回技に磨きがかかっているときたものですから。常に最高の姿を見せていただけるのよねぇ。」
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