健闘の姿 2

破れんばかりの歓声と拍手に包まれた四人の武官と警備隊は、その場を後にする。

その姿を名残惜しそうに見送った上級生たちは、興奮冷めやらぬ様子で、各々の学院での一日を始めるため、徐々に解散していった。


 残された新入生たちに、ゼライツは声をかける。

 「如何でしたか。彼らの腕は大したものでしょう。我がグラブダ王国が誇る、矛と盾の力を実感して頂けたならば、『王立警備隊長模擬試合』を開催した甲斐があったというものです。」


 「あの・・・。私たちも、あの武官様たちのように、素晴らしい技術を身につけることが出来るのでしょうか。」

 新入生の一人が、おずおずと手を上げ、質問を投げかける。


あまりにも高度で圧倒的な技術を目の当たりにしたことで、少し自信を失ったのか、不安を含んだ声。同じ気持ちを抱いた者たちも、続く答えに耳を傾けた。


 「ええ。あなた方は皆、その可能性は十二分に持っているはずですよ。その心意気を持ち続けることは非常に大切です。我々王立学院は、その願いのための協力は惜しみません。安心して、我々に背中を預けてください。」


 ゼライツの穏やかな声は、彼らの不安な思いを優しく宥めた。そしてその後も、いくつかの質問に答えては彼らの心配を一つずつ取り除いていった。


 「さて、広場での説明はこれくらいにしましょう。」

 ゼライツが合図すると、そばに控えていた案内人は、彼の横に大きな地図を広げて立てて置いた。


「本日は、学院内の各施設を紹介します。こちらは昨日お渡しした地図を拡大したものですが、ご覧のように、王宮を正面にみた広場を中心に、西側に学生寮、東側に公共施設が並んでいます。

南側の門を出ると、グラブダ王国市街地。王宮裏手に当たる北側には、秀峰ストラル山がそびえています。

この中でも、今日は東側、大図書館以外の公共施設を巡りましょう。

時計の針が天辺を回る頃、再び広場に集合し、本日はそれで解散になります。

その後は、自由時間です。大図書館や公共施設を見て回るも良し、街に出て活気の中で過ごすも良し。

帰寮の時間まで自由に過ごしてくださいね。では幾つかの班に分かれてご案内しますね。」


案内人たちに連れ立って移動を始める新入生とゼライツたちの姿を、見つめては何か熱心に書き記している数人の学生たちがいた。

彼らは、揃いの腕章を身につけている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る