第二戦 2

「恋のお話、大いに結構!この国が平和な証でしょう!私たちはその平和を守るためにいるのよ!さあ!我々、国の守護者の力、刮目せよ!」

レーゲは構えていた剣を天高く掲げ、高らかに声を響かせた。


「レーゲ様!レーゲ様!」「エルマ様!エルマ様!」

未だに二人の剣は打ち合っていないのにも関わらず、広場には既に二人を称える興奮の声で満ちていた。


「流石はレーゲ。静かな水面に広がる波紋のように、あっという間に場の空気を自分に有利に動かしてしまった。観衆の中心に悠然と立って、いつも心を掴んでしまうのは、あいつの得意技だな。」ジグムントは顎に手を当てて、感心して眺めていた。


「『静謐自若』ってそういう意味なんだよなぁ。俺はてっきり、物静かなエルマと間違えて二つ名を付けられたのかと思ってた。」ルヴェンは懐かしんで言った。


レーゲの手甲に刻まれた魔法陣が怪しく光った。水を増やしたり、形を変えていた時に見た、瞬間的に輝く光とは違う、淡く断続的な光だ。そして、掲げた剣を指揮棒のように踊らせた。


すると、噴水の水が泡の唸りをあげながら立ち上がり、大蛇のように首をもたげた。日差しに煌くその水の体は、蛇の目が幾つもあるように見えた。

睨む先は、風の中心に立つエルマだ。


「うふふ、国王様は私たちの外見だけではなくて、内面すらもお見通しってことよね。あの美しい双眼に適って頂いた、自慢の二つ名ですもの。その名に恥じない働きをしなくては。ねぇ、『疾風流転』のエルマ?」


風を切る音と共に、レーゲが剣を振り下ろした瞬間、水の大蛇はエルマを一飲みにして、そのままの勢いで地面にぶつかった。

激しい破裂音を響かせて形を失った水は、辺りを虹で彩った。

その光の中で、レーゲは踊り子のように、クルリと回ってみせる。特にレーゲを応援している観衆は、ますます黄色い歓声をあげた。


「ああ!今日はなんて良い日なの!美しく完璧な私と私の技を見てもらえるなんて!まだまだたくさん見せてあげたいわ!エルマ!一緒に頑張りましょうね!」


抜けるような青空に、レーゲは声を挙げる。

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