讃える眼差し 2
その声の主たちは、手元に揃いの小さな旗を持ち、しきりに振っていた。
中には、『レーゲ様』という目立つ文字と、手書きの似顔絵を描いた、数人で掲げるほどの布を持っている者もいた。
ルヴェンやジグムントの時とは全く違う、妙に気合の入った声援を送る彼らに、新入生たちは不思議そうな顔を向ける。
「あはは。今回も気合が入っているなあ。あれはレーゲ様のファンクラブだよ。レーゲ様は本業は騎士だけど、服飾デザイナーでモデルもされているんだよ。『グラブダ王国のフリーレン・クチュール』と言えば有名さ。」
「今回は噴水が壊れていないものだから、レーゲは絶好調だな。エルマが気圧されてしまうんじゃないか?大丈夫かい、エルマ?」
ジグムントは、試合後の体を軽くほぐす体操をしながら、冗談ぽくエルマに問いかける。
「問題ない。むしろ、絶好調なら望むところ。徹底的に叩きのめす。」
エルマはその声援の勢いに、眉ひとつ動かさずに、レーゲを見据え、広場中央に歩を進めた。
声援を一身に受けるレーゲは、そんなエルマの様子を見ては不敵な笑みを浮かべ、
「エルマ、私が勝ったらあの約束、果たしてもらうわよ。私、ずっと待っているんだから。」と、スラリと伸びた指で彼女を指差した。
その言葉を聞いて、エルマはほんの少しギクリと体を硬らせた。
「約束?なんだ、高い物でも奢ってもらうのか?レーゲのことだ、結構な物を強請ってるんだろう。エルマも大変だな。」
ルヴェンは先の試合の熱を冷ますため、冷たく濡らした布を首にかけながら笑って言った。
「うふふ。物じゃなくて、お金じゃ買えないものよ。エルマには新作のモデルに立ってもらうの。小さくて可愛い貴方にピッタリに仕立てたんだもの、絶対に着てもらうわ。」
「フリーレン・クチュールが良い物だっていうことは知っているけど、その上で、絶対に嫌。私の趣味に合わないって、何度も言ってる。私に万が一にでも勝てたら、考えなくもないかも、って言っただけ。」
「もう!全く頑固なんだから。」
「・・・疾風流転の騎士、エルマ・シュトルム・フォン・ベルンフォルツ。此度の模擬試合、お受けする。絶対、負けない。」
「『王立警備隊長模擬試合』、第二試合、レーゲ対エルマ。はじめ!」
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