讃える眼差し 1
「すごい。魔法って、あんな使い方も出来るんだ・・・。」
イリスタは目の当たりにした光景を称える言葉を必死に探しながら、声を絞り出した。
「私も知らなかったよ。私たちがいつも使っていたのは、暖炉に小さい火を起こしたり、石を切り出しやすくしたりするくらいのものだったからね。それだって、覚えるのにとても大変だったのに。」
アンナは、胸元にかかるカバンの紐を、震える手で固く握りしめていた。
「魔法のことを勉強すれば、あんな風に・・・自在に使えるようになるのかな。そうしたら、皆のお手伝いがもっと出来るようになるのかな。」
孤児院での日々の仕事でついた古傷が薄らと残る自分の手を、ナグはそっと撫でながら呟いた。
「今のお二人の魔法、講義で習ったあのポイントが活きていたね!」
「ああいった使い方が出来るってことは、こういうやり方もあるんじゃないかしら!」
「あの時のルヴェン様の剣捌き、ジグムント様の受け方、座学だけじゃ分からない部分もあったね。ううん、勉強になるなあ!」
上級生たちもまた、今までに学んだことを反芻しながら、口々に感想を述べていた。
彼らが手にしている本には、何やら小難しい単語や図形が並んでいる。理解出来ないながらも、興味深そうに見つめる新入生に、
「私たちも、まだまだ分からない事だらけだよ。一緒に勉強して行こうね。」と、上級生たちは寄り添うように声をかけた。
「盛り上がっているところ悪いけれど、これくらいで満足してもらっては困るわ。」
涼しい声が響き渡り、広場は水を打ったように静まり返った。
「うふふ、確かにルヴェンとジギーの対戦組み合わせは、見た目には派手よね。でも、最も美しいのは私の技よ。初めて見る子も、既に見たことがある子も、皆私の虜にしてあげるわ。」
長く真っ直ぐに伸びた髪を艶めかせながら、広場中央に進み出たのはレーゲだ。
彼女の手甲がキラリと輝いたかと思うと、噴水の水量が増え、反射する日の光が一層眩しくなった。
「我が名は、静謐自若の騎士、レーゲ・タウ・フォン・フリーレン。此度の模擬試合、お受けする。この美しさに、一瞬たりとも目を離させはしないわよ。」
その宣言の後、今までとは異なった、破れんばかりの声援が起こった。
「レーゲ様!レーゲ様!今日もお美しゅうございます!頑張ってください!」
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