第一戦 4

「魔法の反転だ!」

 上級生たちは口々に叫んだ。


 「うん。よく勉強しているね。その通り。物を重くしたり硬く出来るなら、その逆も出来るのさ。砕けた石が転がる程に風があるから、細かい砂をもっと軽く出来れば砂嵐のようになると思ってね。ルヴェンの魔法はどんどん熱量が上がっていく上に、剣の速度も速くなるから、何とかこれで止められないかと考えたんだ。上手くいって助かった。」


 ジグムントは満足そうに笑いながら、周囲の学生たちに聞かせる。


 「砂で目潰しか。随分古典的で子供じみた妨害だな・・・。しかしそれにまんまと引っ掛かったのは悔しい。流石は悪戯好きで悪名高いジグムントだ。レーゲの水が上手く目隠しになったと思ったのに、逆に仕掛けられるとは。いてて・・・。」


 ルヴェンは目をしぱしぱさせながら、ジグムントを睨みつける。


「古典的な手だと侮ってはいけないぞ。悪戯とはいつだってそういう物だ。」


満足に目を開けられないルヴェンに、ジグムントがゆっくりと近づく。一歩踏み出すごとに、石畳が割れる音が響く。

ルヴェンの間合いに悠々と入ったジグムントが掲げる剣は、見た目に似合わない、低い唸りを伴いながら振り下ろされた。

 

 咄嗟に防御の姿勢をとるルヴェン。重い音を立てて、二人の剣はぶつかる。

ルヴェンは強い炎を出しては、牽制を取ろうとするが、ジグムントはその熱には全く動じていない。


 「ぐっ・・・。マジかよ。」

ルヴェンの顔に焦りが見え始める。ジグムントが剣に込める力はますます強く、重くなり、徐々に押されていく。


 遂には、ルヴェンは膝をつき、全く身動きが取れない状態になった。

 「ふふふ、今回は私の勝ちだな。」

 「ああ、くそ、悪戯ジギーめ、覚えていろよ。」


 「両者そこまで!第一試合、勝者、ジグムント!」

 ゼライツによって試合終了を告げられると、広場は大きな歓声と拍手に包まれた。

「ジグムント様!ジグムント様!」

 「剛力無双のジグムント様!」


 「やあやあ、ありがとう、ありがとう。」ジグムントは手を挙げて、その声に優しく感謝を述べた。

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