真白な朝 3
「えー!ナグちゃん、昨夜オリビアさんに会えたの!?」
集合場所の噴水広場に向かう道すがら、アンナとイリスタは驚きの声をあげた。
「うん。二人が寝てから結構過ぎた頃だったかな。先輩たちの話していた通り、とても綺麗な人だったよ。月みたいな銀髪で、スラリとしてて・・・それに、とても優しい声だった。すごく格好よかった。いつも遅くなるから、「二人にも宜しく」って。」
ナグは、昨夜の思いがけぬ憧れとの邂逅と、その瞬間の感動を、二人に話していた。
「いいなぁ、私も早く会ってみたいなぁ。」
「今朝の食堂でも会えなかったね。私たちよりも早く食堂に来てた先輩たちでさえ、今日は会えてなかったみたいだし・・・。」
「オリビアさんは、アーカーシャの研究をしてるって先輩たちが言ってたけど、最上級生って、他にはどんな研究をするんだろう?」
噴水広場への続く道は、三人と同じく、学院へ向かう学生たちで溢れていた。
道の両脇にずらりと並ぶ家から、元気いっぱいに飛び出してくる者や、未だ寝ぼけ眼で、朝日の眩しさに目をしぱしぱさせている者もいた。皆、勉強道具が満載の鞄をそれぞれ抱え持ち、広場を目指して歩いていた。
また、学生を見送ったであろう寮母たちは、大量の洗濯物を干したり、掃除を始めたり、忙しなく動いていた。
洗濯紐に掛けられた真白なシーツは、朝日の光を受けて輝き、風が吹き抜けるたびに、踊るようにふわりと広がっては揺れ、道行く者たちの頭上にはためく王国旗の群青色をより一層濃いものにしていた。
昨夕、寮へと歩いた時とは全く違う様相を見せる道に、アンナとイリスタは、又もや目をあちこちに走らせていた。
そんな中ナグは、この道の様子に、二人とは少し違う印象を抱いていた。
ナグが育った孤児院は、国からの補助があると言えど、滅多なことでは新しい物は買えず、特に、寝具はどれもくたびれていた。
洗濯をしても、今目の前に広がる光景のように真白になることも、ふかふかになることも無かった。
それでも日々の洗濯や掃除は欠かすことは無く、可能な限り努力を重ねてきたナグだったが、王宮直轄の学院とそれ以外の孤児院の、埋めることの難しい差を目の当たりにして、
「少し・・・眩しいな。」と、寂しそうにポツリと呟いた。
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