真白な朝 2
「コニーさん、皆さん、おはようございます!」
パタパタと忙しない足音を立てて、朝の支度も完璧ではないまま、三人は食堂へ駆け込んだ。
使い込まれた鍋掴みを手につけたまま、コニーは厨房から顔を出す。
調理の熱を受けて、既にうっすらと額に汗が滲んでいる。
「おはよう。ナグちゃん、イリスタちゃん、アンナちゃん。よく眠れたかしら。・・・うふふ、その顔を見れば、ぐっすりと夢の中だったみたいね。」
昨夜の夕食時から、すっかり模様替えされた食卓には、カリカリに焼き上がった黄金色のビスケットと、甘酸っぱい赤色の果実から作ったジャムが並んでいた。
上級生は、既にそれぞれ朝食を食べ終えては、ちらほらと出かける準備を始めていた。
「おはよう、ちょっぴりお寝坊さんの新入生ちゃんたち。今日の朝ごはんは、元気の出る魔法がかかった、クルミ入りのビスケットだよ。」
「昨夜遅くに、オリビアさんが帰ってきて、お土産でクルミを持ってきてくれたんだって。王宮の調理師の方から分けて貰えたそうだよ。」
「こっちのジャムは、私たちの手作りなの!昨日の朝、庭の木の実を収穫して、煮詰めて一晩寝かせた、出来立てジャムだよ。そしてこっちはね・・。」
急いで食卓についた三人に、上級生たちは口々に上機嫌で説明を始めた。昨晩の食後に出された茶のように、朝食にも、寮の庭で栽培されている物が使われているという。
「どれもすごく美味しそうですね。いただきます!」
と、挨拶はしたものの、三人は目の前に並ぶ、所謂「上級生のオススメメニュー」を見回しては、どれから手をつけようか迷ってしまっていた。
その様子を見ていたコニーはクスクスと笑った。
「うふふ、好きなものから食べていいのよ。皆ったら、アンナちゃんたちを朝から困らせちゃダメじゃない。さ、食べ終わった子は、出発の準備を進めなさいな。」
「えへへ、ごめんなさい。どれも自信作だから、ついオススメしたくなっちゃって。では、コニーさん、私たち先に行ってきますね。」
「はいはい、今日も一日しっかり学んできてね。行ってらっしゃい。」
玄関の扉についたドアベルが、開かれるたびにカランカランと軽い音を立てる。遠ざかっていく上級生たちの足音に、三人は急かされながらも、口いっぱいに広がる美味をしっかりと味わっていた。
「はぁ・・・。今日も一日素敵な日になりそう・・・。あれ、今声に出てた?」
イリスタの思わず漏れ出た心の声に、アンナもナグも笑って、同意した。
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