四人の大公 1

集合場所の噴水広場には、一晩休んで、すっかり緊張が解れた新入生たちと、ゼライツたち案内人が集まっていた。

 広場の中心より城側では、「警備隊」の腕章を付け、鈍く光る重盾を携えた兵士たちが整列している。

彼らの視線の先には、謁見の間で鬨の声を挙げていた、あの四人の武官が並び、何やら指示を出しているようであった。


 「あれがコニーさんが言ってた警備隊かぁ。何か準備しているみたいだけど、何だろうね。」

 「うーん。ここで何かするのかな。それにしても、重そうな格好だね。」

 「ええと・・・四人の中で一番大きいのが、ジグムントさん、だっけ。私たちの寮の・・・。」

 三人は、改めて四人の武官をじっくりと見つめてみた。

 

 まず、一番体格の良い、「剛力無双のジグムント」と思われる者。身長は、彼の前に並ぶ兵士たちよりも頭一つ分程高く、甲冑の大きさからも、彼の身体を覆う筋肉の分厚さを感じられる。

鷹の羽色の髪は、さっぱりと短く整えられ、そこから伸びる、深い焦げ茶色の大きな角を持つその姿は、草原に佇む雄牛のように、穏やかで堂々としていた。


 右隣には、くるりと巻いた若草色の髪を持つ女性。四人の甲冑は共通しているが、彼女の脚絆には鳥の羽のような飾りが付いており、いかにも身軽そうな雰囲気を受ける。おそらくは、「疾風流転のエルマ」なのだろう。


 さらにその右隣には、燃えるような赤銅色の髪を持つ男性。ジグムントと思われる者とは違い、こちらは細身ながらも、鍛え抜かれた体躯をしている。

彼の携える剣の周りの空気は、陽炎の様に揺らめいていた。こちらは、「豪炎一閃のルヴェン」だろう。


 左端には、深い藍色をした、腰まである長い髪を一つに束ねた女性。彼女の小手には、何やら魔法陣のような模様が刻まれている。

噴水に手を向け、キラリと光ったかと思うと、真っ直ぐに落ち続けていた噴水の水が、波打つように形を変える。

静かに魔法に集中している彼女は、「静謐自若のレーゲ」だと思われる。

 

 警備隊は、その噴水の形を合図に、様々な防御体制を実演していた。掛け声を出さずとも揃えられたその動きは、彼らの日々の訓練が如何に厳しいものかを感じさせるのに十分であり、アンナ、イリスタ、ナグの三人は、ただ呆気にとられて見つめていた。


 「さて、そろそろ時間ですね。では、始めましょうか。」

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