ルーグ邸寮 5
謁見の間での式典で、白銀の甲冑を身につけていた四人の武官は、それぞれ、グラブダ王家に仕える、四貴族の子孫であるという。
剛力無双の騎士 ジグムント・ルーグ・フォン・ブラウシュタット。
疾風流転の騎士 エルマ・シュトルム・フォン・ベルンフォルツ。
豪炎一閃の騎士 ルヴェン・ヴルカン・フォン・ツェンハルト。
静謐自若の騎士 レーゲ・タウ・フォン・フリーレン。
四人は、日々の殆どを城内で過ごすため、空き家のようになっている、自宅などの数々の所有する屋敷を、学院の学生寮として提供している。
また、彼らは王国警備隊長としても活躍しており、王宮の敷地内はもちろん、市街地の巡回も交代で行っている。その姿は勇ましく、眩しいほどだという。
「たまに帰られた時は、毎回素晴らしい剣技とお話を披露してくださるの。そんなジグムント様の姿を見て、卒業後は、王国警備隊に入るのを希望する子がいたりするのよ。とにかく明るくて気さくな方だから・・・うふふ、帰ってこられるときをお楽しみにね。」
コニーは、彼の姿を思い出しては、クスクスと笑っていた。
三人の部屋は、玄関左側の階段を上がって、突き当たり右側の部屋だった。扉には、三人の名前の表札が掛かっている。
これからの生活の中で、最も重要な空間を前に、三人は軽く息を呑んでは、カチャリ、とゆっくり錠を外し、中に踏み込んだ。
正面には、夜の灯りを薄らと取り込む大きな窓。その左右に、その灯りを吸い込むほどに、真白な寝具を拵えた二段ベッドが二つ。それぞれの傍には、小さな飾り棚。
手前には、インクと紙の匂いが仄かに染み込んだ、程よく使い込まれた机が、左右に分かれて並んでいる。
部屋の中央には、低めの小さな丸テーブルと、真新しい布で作られたクッションが置かれた小さな椅子があった。
夜の紺碧に沈むその部屋は、使われていた気配すら隠れてしまったように、ひっそりと横たわっていた。
コニーは、扉の横に掛けられている燭台に灯りを灯した。ゆらゆらと揺れる暖かな橙色が、寂寥の青を部屋の隅に追いやり、覆い消した。
「可愛く飾るも良し、好きな本をひたすら並べるのも良し。部屋は自由に使って。ゆっくり荷解きしながら、貴方達の過ごしやすい部屋を作ってちょうだいね。」
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