ルーグ邸寮 3
コニーは食後に、飴色に輝く暖かいお茶を運んできた。
「これはうちの寮オリジナルブレンドのお茶なのよ。薬草学を修めた子が改良した茶葉に、栄養学を修めた子が改良した果物の輪切りを入れているの。」
他の寮にもそれぞれ特徴あるお茶があり、毎年雪が降る頃に、市井の人々に振る舞っては、最も人気のあるお茶を決める祭りがあるという。
材料は寮の中庭で栽培しており、一位になると、グラブダ王宮御用達となり、その年一年もの間、国王以下王宮の人々の喉を潤すこととなる。
そのお茶は、酸味のある果物によって、ほんのりと甘く香るお茶の味が際立ち、それでいてさっぱりとした後味に仕上がっていた。
「去年は惜しくも二位だったんだけどね。」
「今年こそは絶対に一位になるんだ!」
三人の荷物を運び終えた上級生たちが、言葉を続けながら、食堂に戻ってきた。
「コニーさん、終わりましたよ。」
「お疲れ様でした。さぁ、みんなも座って。お茶にしましょう。」
食卓周りが賑やかになり、上級生たちはそれぞれ自己紹介を始めた。出身地も、種族も、この国で学びたい事柄も十人十色で、三人は目を輝かせながら話を聞いていた。
その様子を、コニーは満足そうに見つめていた。
窓の外が、すっかり闇に包まれた頃、三人はふと食卓の椅子が一つ余っていることに気がついた。
「そこの席の方は、まだ帰られないのですか。」
ナグが問いかけると、上級生たちとコニーは少し困った顔になった。
「ああ、オリビアさんね。ルディミア魔法学院っていう学校からの交換留学生なんだけど、魔法学に関してとても優秀な人でね。アーカーシャの魔法の研究が忙しくて、なかなか帰ってこられないのよ。ちゃんとご飯は食べられているのかしら。心配だわ。」
コニーは窓の外で薄く灯る、王宮の明かりを心配そうに見つめていた。
「綺麗な人だけど、とにかく寡黙だから、最初は少し近寄り難いかもしれないね。」
「でも優しい人だよ。寡黙な分、みんなのことをよく見てるから、的確な助言をくれたりするし。」
「そうそう!私もこの間、勉強を見てもらったの!流石はこの寮の最上級生って感じかな。それに、学年で唯一、大図書館の地下の貴重書庫に入れるんだよ。」
「君たちの部屋は、彼女の部屋の向かいだから、会えた時に色々聞いてみるといいよ。」
上級生たちは憧憬に満ちた眼差しで、口々に彼女の姿を述べていた。
まだ見ぬ彼女に早く会ってみたい。三人は声には出さなかったが、同じ気持ちを抱いていた。
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