ルーグ邸寮 2

食卓に座るやいなや、人心地ついたのか、アンナ、イリスタ、ナグの腹の虫がグゥ、と軽い音で鳴いた。あまりに同時に鳴いたので、三人は顔を見合わせては、恥ずかしそうに笑った。


「まぁ、可愛い音だこと。さあ、召し上がれ。」

ニコニコと笑いながら、食堂横の厨房から、コニーは料理を運んできた。


ゆったりと湯気が立つ、豆のスープ。

果物のソースが細くかかっている、柔らかく煮込まれた肉の横には、色鮮やかな野菜が、花のように添えられている。

よくしなる木の枝で編み上げられた籠の中には、窯の熱をほんのりと含んだ真っ白なパンがふっくらと重なっていた。

美しい料理が並ぶその光景は、まるで絵画のようで、三人はしばらく見惚れていた。


再び鳴いた腹の虫の声に、はたと気がつき、

「ありがとうございます。いただきます。」

と、礼を言って、料理を口に運び始めた。


思えば、アンナとイリスタは、グラブダ王国に到着するまでの間は、揺れる船の上で、保存の効く硬い食料から作られた料理しか口にしていなかった。

こんなにも腰を落ち着けて食べる料理は、故郷を発って以来、いつ振りだろう。

そう考えると、いつの間にか涙が溢れていた。


ナグは、決して裕福ではない孤児院での食事を思い出していた。

特に年長者であるナグは、養父母の手伝いで、年少者たちの世話をすることが多かったため、自分が食事をする頃には、料理はすっかり冷めてしまっていることが殆どだった。

暖かい料理に伸びる手は、自然と忙しなくなっていた。


「あらあら、三人とも大丈夫?ゆっくりお食べなさいな。」

予想よりも随分早く空になった木の籠に、追加のパンを入れながら、コニーは驚いて言った。


「とても、とても美味しいです。」

三人は、口いっぱいに広がるその味を噛みしめながら、感じた思いを、何度も何度もコニーに伝えていた。

「ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しいわ。」

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