西三番通り 1

学院内の全体地図によると、石畳の広場と王宮を中心に、東側と西側にそれぞれ三つずつ、合計六つの小道が半放射状に広がっていると描かれている。

東側には、音楽ホールや博物館などの公共施設が並び、西側には学生寮が集まっている。


アンナ、イリスタ、ナグの三人は、割り当てられた学生寮へ向かってゆっくりと歩みを進めていた。

道の両側に並ぶ、色とりどりの花で飾られた白い建物は、少し傾いた茜色の日の光をそのまま映しだしている。海からの柔らかな風に吹き散らされた花弁さえも、広場から続く石畳に鮮やかな色を添えていた。

建物の屋根の少し下から伸びる旗棒には、王国の旗が掲げられ、アーチのように三人の頭上を覆っていた。

 

 「今日の講義はこんなので・・・。」「今日の夜ご飯は・・・。」「明日は・・・。」

 その日一日を充実して過ごしたであろう学生たちが、それぞれの寮に暖かな光を灯しながら会話をしている。

 そのやりとり一つ一つが気になって、三人は右に左に、忙しなく顔を向けていた。


 三人の寮は、「西三番通り・ルーグ邸寮」。歩いた道は、ひたすらに真っ直ぐではあったが、通りの一番奥突き当たりの建物であった。

 到着する頃には、三人の影はすっかり伸びきり、山手には夕闇と共に星が瞬き始めていた。


 「ここだね。・・・イリスタ、大丈夫?」

 特に荷物の多いイリスタは、汗だくで険しい顔になり、アンナの問いかけに、無言で頷くことしか出来なくなっていた。

 

ナグが扉に掛かる、龍の形をした呼び鈴を鳴らした。

「こんばんは。ごめんください。」

カチャリ、カランカラン。と、心地よいドアベルの音と共に扉が開いたかと思うと、三人は暖かな光と、ふんわりとした香ばしい匂いの歓迎を受けた。


「まぁまぁ!新入生の子たちね。ようこそ、我がルーグ邸へ。さぁさ、中へお入りなさい。遠いところ、お疲れ様でした。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る